• テキストサイズ

闇に咲く華

第4章 番外編


「どうしたんですか?」
「お前、何をやった?」

違和感を感じた。昴の右手に持つ苦無に視線を移すと、血で錆びているような錯覚を覚える。いや、こいつは武器の手入れを怠らない筈だが。
苦無を眺めていれば聞き手の手首を掴まれ、走った痛みに眉を寄せる。

「見せたいものがあるんです」
「…貴様は誰だ?」
「さあ」

うっそりと、笑う表情に思わず鳥肌が立つ、いつの間に入れ替わったのか。強い力で手首を掴まれ人間とは思えぬ力で抗う事も出来ずに村の奥へ奥へと引っ張られて行く。周囲を見渡すが何故か周囲に居た部下の忍の気配が無い。何をしたんだとただただ睨む

「昔、ここで焼き討ちがあったんです。ああ、織田信長の話ではないです。野盗によるものでした」

それはそれは酷い光景だったと昴の姿をしたモノは語る。村の男は皆生きたまま炎で焼かれ、女子共は死ぬまで野盗の玩具にされここに居座り地獄の日々が来る日も来る日も続いていた
ずるずると引きずられたままに話を聞いていると昴の顔が苦痛に歪む。

「…野党が来る前に。"俺"によく会いに来る娘が居たんです」

よく村の為に働き。自分の元に来てはにこにこと美しい笑顔を見せる娘でした。

「あの野盗共は散々犯したあと首を跳ね、死体は興味が無いと俺の側で放逐したんですよ。
もう戻らないんです。会いたくて会いたくて。あの笑顔も声も。何一つ戻らないんです」
「お前は、一体」
「あれから俺は野盗を皆殺しにしたんです。恨んで恨んで、憎んで憎んで。声が聞こえたんだ、恨みの感情に圧し潰されそうな時に、皆殺しにしろって。でもそれが望みじゃない、俺はただただ…」

引っ張り出されたのは村からさほど距離が無い丘で、その存在に一瞬息が詰まる。大きな、何千年生きてきたのか分からない程のご神木の表面から黒々とした何かが流れ上の方では野党の様なナリをした死体が張り付けられていた。村で嗅いだ異臭が充満している
スルスルと根が生き物の様に這いご神木の周辺には血だまりのようにドス黒い液体が池の様に存在する。もう何年も雨水を吸っていないのだろう。瘴気の濃さに掴まれていない方の手で口を塞いだ。
/ 334ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp