第4章 番外編
ぐっと、口布を引っ張り今朝見た場所を見る。爪先程の大きさだった赤い線はその3倍程長くなっていて、急いで部下の首も確認すると同じ現象の者が数人いて半ば恐怖で狂乱する者も出る始末
これは、どこだ?呪術を掛けている者が居ないか、外に出て辺りを見回してもうまく頭が回らない。
ここの死んだ息子は昨日、死ぬ前に城に主人と2人で来ていたのを思い出し。
私が対応した、そう、そしてその場に居た者はここの部下が数名。全員首に線が入っている者だ
「落ち着け、思い出せ!」
「く、黒羽様あああ!」
「どうしたのです!」
部下が屋敷から飛び出して来たので近づき、屋敷の中に再び戻ると呪術の痕が付いていた部下の様子がおかしい事に気付いて肩を揺する。
首の線は首回りに達しており、線が繋がったら変死体と同じく死に追いやられるのではないかと推測した瞬間。頭の中で誰かの声が聞こえる
――欲しい
―――欲しい
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!!
『あなたの顔、ちょうだい?』
『あなたの美しい顔をちょうだい?』
『あなたが愛しいの、その美しい顔をちょうだい?』
「昨日、初めてお会いした時に貴方に心を奪われたのです。兄で試してみたのですが」
「あ、なたは、ここの」
「お慕いしております、でも私、忍は嫌いなんです」
脳の奥底からこの女は危険だと警報が鳴る、一刻も城に戻らなければと全身が叫ぶ
ビリビリと何かが破れる音、ブチブチと何かが裂ける音に目を見開けば。部下の1人が地に伏せり倒れた。
首から上がまるでとてつもない力で引き千切られたかの如く裂けた首から血飛沫が舞い、女は高らかに笑う。
「次は貴方の番」
首が熱い。両手で抑えて倒れ込むと痛む首に歯を食い縛って、掻き毟ると何か手に当たってそれを握り締めると
『ごめんね、彼はあげられないの』
「っ…ひ、めさまっ」
パキリ
何かが割れた瞬間、我々忍ではなく目の前で笑ったままの女の首が裂ける
どっと、変な汗が噴き出す中、手の中の木の板は甘い桃の香りを漂わせて真っ二つに折れていた。