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闇に咲く華

第4章 番外編


2017ホラー企画:篠山黒羽

天気の悪い、曇天の朝、姫様に呼ばれて顔を出すと何やら安心したような顔で私を見て、何があったのだろうと首を傾げた。
どうしたのですかと聞いても何やら言うべきか言わざるべきか、迷ってる風で。
言葉が出てくるまで待とうとお傍に座った直後に首にかけてある口布を引っ張られて思わず座ったままよろめく

「姫様!?」
「黒羽、この首の線なに?」
「首、ですか?」

南蛮の鏡を向けられたので自分で口布を外し、自分の首を見ると横に赤い線がうっすらと着いている。はて、どこで引っ掻いたものだろうか
お礼を言って鏡を返し、どこで着けたものかと問われたが心当たりが無く首を捻れば僅かにチクリと痛みが走った気がする。

「んー」
「これくらいの傷、大した事ありませんよ」

心配する姫様を宥め、今日は部下と少し問題の起きた城下の外れに向かうと告げれば姫様は何かを慌てて取り出して私の胸に押し付けて
見れば薄い木の板の様なもの。お守りだと言われありがたく受け取ってから頭を下げ城を後にした。

城下の外れの、小さな商家だった。城でも懇意にしていた主人の息子が変死していると、昨日報告が入ったので原因を探るべく忍の部下を引き連れて家に入る
変死した男の父親は何かを視たのか気が触れた様に怯え、子息に何があったのか聞いてもまともに言葉が返って来ず。早速死体を見ようと襖で閉ざされた部屋を開放すれば嗅ぎ慣れた死臭に何か違和感を感じる。

「これは…黒羽様」
「どうしました?」

少し怯えた風に死体を見る部下に首を傾げて、どれどれと覗き込んで少し驚く。首周りに朱色の線がくっきりと現れ、その上から顔面にかけて…

「顔面がありませんね」
「じゅ、呪術の類でしょうか」
「首を持って行くのなら分かりますがご丁寧に顔面を削ぎ落すとは」
「この首の赤い線、嫌な感じがします」
「赤い線…」

チクリと。首に違和感を感じた気がした。
黒羽は目を見開くと着いて来た部下に声を掛けた。

「南蛮のガラス鏡、持って来た小道具の中にありませんでしたか?」
「これですか?」
「貸して下さい」
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