第4章 番外編
2017ホラー企画:お市
兄さまから、ある女中が私にお願いがあるらしいと言われて。離れの女中部屋を訪れる事になった。
なんで私が呼ばれたのか分からず呑気に城に居たお子さん抱っこして遊んでたら
何やってるんだと忍装束のままのお兄さん達に突っ込まれた。不穏な気がしなかったもので。こんな可愛い子と遊んでたんだよ。
「…子供?」
「どこです?」
「え?」
私の腕の中にいるんですが、5歳くらいの女の子。きみ人じゃなかったんだねと詫びれば「久しぶりに可愛がられたでのう」とか通りすがりの年上でした申し訳ありません。
一緒に居たいと言われたのでデレデレしてお手々繋いでます。皆に見えないのがとても勿体ない。この子供の可愛さを見て欲しい。年上だけど。
よくお越し下さいましたと女中頭の方に案内され、女性に近付いた。布団の上に横たわる女性の傍らに座り手首と首に手を当て脈を計るも、少し早いかな、熱は無さそうだし。
いつから眠ったままなのかと問うと2日くらいとのこと。少し手足が浮腫んでる感じがするけど。少し様子を見て通ってみるねとその場を後にした。
次の日その次の日、観察していって分かったのは、彼女の身体が少しずつ肥大していて。3日目を過ぎたあたりから皮膚の表面がじわりと裂け、血が滲んでいる。それは全身に渡っていて、明日になったらどうなるか考えたくもない症状だった。
顔も腫れあがり消毒液を浸した布で拭いながら。何の呪いだろうと首を傾げた。
念の為に他の女中さんに何か聞いて無いかと問うと、倒れる前の日まで里帰りをしていたそうな。
「里帰りって、故郷どこか聞いてる?」
「ええっと…相模の方だと小耳に挟んだ記憶が御座います」
相模、そう聞いた直後に不思議と「しとどの巌」という言葉が脳内で浮かび上がって、いや、あそこは心霊スポットとして未来でも有名だけど。
『しとど、ほう、ほう』
「ふぉっ!?」
急に背後から声がしたと思ったらここに来る時に連れて来た年上の女の子でした。興味あり気に寝込む女中さんの顔を覗き込んで呵々と笑う。
「えっと、源頼朝で有名よね?」