第4章 番外編
2017バレンタイン:忍
どろりとした黒い液体を鉢に入れ事前に用意したバターと白砂糖、牛の乳
少しずつ加えながら綺麗に混ぜ合わせ…って
「私は何でちょこれいと?を作ってるんでしょう」
「俺に聞いても知らんがな」
「…黒羽さんって結構抜けてますよね
確かばれんたいん?なので作ってみようって言ってませんでした?」
「あ、いえ。流石に動機は覚えてますけども。忍がこんなに贅沢していいのかなと」
同僚の「今更だろう」と言う言葉にがくりと項垂れ
でも、手は休まず器用にしょくらあとを混ぜ込んでいる
普通の忍が見れば目を剥いて驚く事は必須で。
隣に立った同僚が冷やす為に、氷の婆娑羅を使ってる様は何だか見慣れた光景で思わず失笑する。
「笑うな」
「す、すみません…」
もう私達は忍を辞めたら料理で生計立てれそうですね。
慣れた手つきで混ぜ合わせ、姫様が作った型に流し込む
あとは雹牙の氷で作った冷凍室に入れれば完成です。
「で?」
「はい?」
「黒羽さん、これ誰宛です?」
「誰でしょうね」
子供の様に「えー」と抗議の声を上げる昴に笑って
雹牙に礼を言ってから急いで警備を再開した。
「黒羽さん恋人できた?」
「なわけない」
「雹牙さんどっからその自信出て来るんです?」
「長年の付き合い」
「どうせ俺は新人ですよー…」
「俺達はお市様にお仕えする身。お市様以外に目移りしてどうする」
「それって」
口が過ぎたな、己の言葉で余計混乱する昴の背を叩いてから、さっさとお市様の部屋の警護に回れと厨から追い出し
婆娑羅で冷凍室を補強してからその場を去った。
「練習、みたいなものです」
「なんだ、てっきりお市様に渡すと思っていたんだがな」
「私なんてまだまだ、こんな歪なものは差し上げられません」
歪か?首を傾げる雹牙に苦笑いをし、先日作ったちょこを口に放れば
雹牙の視線がじとりと。
「しょくらあとは自腹ですんで」
「自分用か」
「お市様から頂いたお菓子美味しいですねー」
まあ、自分のを渡すよりも姫様から頂いたものが一番ですよ。
2017バレンタイン企画「自分」