第4章 番外編
2017バレンタイン:市
幼い頃から、そういう行事があると聞いていた。
心から想い慕ってたり、友達に送ったり、家族であったり
逆に男から渡す場合もあったのだが。
「はい、元就、晴久」
「頂く」
「お、悪いな」
毎年恒例のお泊りのある日
市はしょくらあとを調理した菓子を持ち各々に配る
ん?毎年くれる菓子の包みが華やかになっていた。
特に意図は無いと見られるが晴久の様子がおかしい
手に持った桃色の包みを見つめて、眉間に皺を寄せて
阿呆、市が驚いてるではないか
「如何した」
「いやあ、気のせいだと思うけど」
「なあに?市なにかした?」
「その大きい包みは、もしかして。あー…本命ができたか?」
は?
確かに我等と大きく差が付き。大きな包みはあるが。
そうか、そう見てもおかしくはない年に我等もなったのだろうか…
違う、と市は焦り首を横に振って、弁明をしても
冗談交じりに突いてやれば次第に顔が赤くなった。
「晴久!しつこいとお菓子没収!市は本命はいませーんーーー!」
「何だ、おらぬのか」
「んで?その藍色のでかい包みは?」
「もう、これはね…」
照れくさそうに、顔を赤らめて。目が泳ぎはじめて
いや、本命居ないって今言っただろうが。何勝手にいると錯覚し始めたのか自分でも分からん。
「大きいのは…兄さま、これより小さいのが黒羽、雹牙、昴で…」
「相分かった。其方はほんに。信長公を好いてるな」
「うん、兄さま大好き!!」
茶化して聞いた我らが阿呆であったか。
市の信長公好きは変わらずで、家族思いなのも幼い頃からであった
「では、今回。チョコの中に抹茶を入れてみましたので感想どぞ」
「…」
嬉々として紙と筆を持って来たが。
無言で筆を取り上げ、我の膝枕になる様転がすととぼけた顔でこちらを見る
「あれ?」
頬を両手で摘まんでのばし、己のチョコを広げて1つ口に入れると
口に広がる甘くて苦い馴染みの味。
「ほう、抹茶と合うか」
「お酒を入れても美味しいと思わない?」
「我は酒を口にせぬ」
「うん知ってる、元親に実験するから」
…無性にイラ立って、夕時、安土城へとやって来た元親を攻撃した我は悪く無い。
闇に咲く華 バレンタイン企画「義理」