第4章 番外編
2016ハロウィン:百地雹牙
カサカサカサ
チリチリチリ
キリキリと甲高い虫の音が耳から脳に抜けていく
ある屋敷に潜入したはいいが、遅かったらしい。
屋敷内に生きてたであろう人間が全て亡骸と化して
貪られるままに死肉に群がる虫の餌となっている
上がった屋根裏から下に降り、火を着けて明かりを灯す。
口布をして腐臭漂う家屋を歩いて回り
ふと
何が気になったのか、足を止めて目の前の亡骸の様子を探る
屋敷に点在する亡骸と、人相や倒れてる場所を考えても
"何が起きて死に至った"のかさっぱり解らない。
「(この者達に何が逢ったんだ?)」
顔は恐怖に歪んでいる、だが目立った外傷が無いのだ。
賊ならば一ヶ所に住人を纏めるはずなのに。
ぐちゃり、蛆の群がる亡骸をおろすと何かの潰れた音と
さっきから耳に五月蠅い羽虫の羽が擦れる音がする
周囲をもう一度見渡し、手に持った松明を亡骸に向けて放った。
1つの村の住人全員が原因不明の死を遂げている
まるでその場に居ながら急に倒れたと言うか
「こうも謎が多いと報告がしずらいな」
屋敷の外に出て口布を外して息を吸う
腐臭で満ちた屋敷には何も無かった
原因は何かと考えていると
再び虫の羽音が炎の音をかき消し耳へと入ってくる
一体何だと後ろを、炎に包まれた屋敷を見ると
なんだ
誰も居なかった筈、だが燃え盛る屋敷の前に人影を見る。
だが、気配が無い
カサカサカサ
キチキチキチ
「これ、は!」
炎の明かりが暗く見えなかった者の影を写し
流石に息を詰める
人影かと思った者は人ではない、死した者が虫の巣の様に成っているのか
これは、まずい
虫がぎっしり腸に詰まっているのか食われ蠢く
目玉の無い眼から血の様な涙
うすらと開かれた口からも様々な虫が見え隠れし
さっきまでの五月蝿く感じていた音はこれだと思いたくもない