第4章 番外編
2016ハロウィン:篠山黒羽
その日、私は姫様にお願いをし、広くない自室から材料を持ち出し
ハロウィンで使うお八つを自分で用意する為に厨を借りて
…何で忍の私達が行事に参加するんでしょうね。
姫様に教わったお八つのプリンを何個も作っていると厨が甘い匂いに包まれるから
忍装束で来なくて良かった。
「…」
この時間なのに視線を感じる?
でもその気配はとても小さくて・・・
厨の入り口で子供がこちらをじっと見つめていた。
「貴女は?」
「…ぁ」
怯えさせるつもりは無かったのですが
着物を着たおかっぱの少女が、目を丸くして
駆けて行ってしまいました
お菓子は子供への凶器ですね
「お菓子作ったので食べませんか」
ピタリと止まり、涙目になって此方を見て
トコトコと戻って来たのを微笑ましく思いながら
おいで、と傍にある縁側に座る
子供の年はだいたい5か6程?
綺麗に切りそろえたおかっぱに着物は美しい柄で質が良い
はて、何処の武家のお子でしょうか
この子が記憶に無いと言う事は新しく入った者?
じっと大きな瞳に見つめられて、ああプリン渡すの忘れてました。
「ハロウィンのお八つに出す物だったので」
トリックオアトリートって言って見て下さい
子を怖がらせない様ににこりと微笑めば。もじもじしながら
「とりっく おあ とりーと?」
「はい、よく言えました。プリンをどうぞ」
「ぷりん?」
「ええ、ここ…安土城の姫様が作ったんですよ、私のは見よう見真似ですが」
器をうけとって、匙でプリンを掬ってぱくり、と口に入れた
その顔が美味しいと言わんばかりに顔に花が咲く。
「…おいしい」
ああ、よかった。こうやって自分で作った物を美味しいと褒められるのは嬉しいです
子の頭を撫でれば気持ち良さそうに目を細める、さて。