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闇に咲く華

第4章 番外編


俺の生まれる前か俺の情報不足か?
再び口を開こうとした老人の言葉を遮り「じーさんまた飲んで昔話かよ!」と
壮年の男に連れられて。

少し、引っかかったが。
離れた空き家に入り、様子を見る。血の臭いも村では特にしなかった。
爺さんの只の昔話?その昔話が本当ならば村人はああではない
もっと殺伐としたものになるのではないか?

軽く武器の手入れをしてから壁に背を預けて座り
不思議と睡魔が襲ってきたので、軽くだけ眠る事にした。

ざり…

ざりっ…

ふと、微睡の中で聞こえた足音に意識が覚醒する。
恐らく真夜中と言って良い程の時刻

ぞっとする程気温が低く感じるのもそうだが
何だ?村人は眠っている筈なのに。

四方八方に何かの気配を感じて片手でクナイを握る力を強める
賊が村を襲ったか?否、其れならば真っ先に俺が気付くだろう

ざり…

ざっ…

足音が止んだ?
気配も音もその場で止まり、何故だか。

異様に冷や汗が泊まらない、背筋に冷たいものが走り本能が逃げろと叫んでいる

ふと、老人の話が横切ったのと同時に、お市様から聞いた話が重なった
まさか、お市様の話は未来の出来事だろう?

ここは名も無い村。けして"八墓村"と言う名ではない

ガンッとドアを蹴飛ばし、小屋の屋根に登り周囲を見渡してゾッとした
昼間、声を掛けてくれた者、助けた娘、その父親、村人が建物を囲んでいる

"斧で着けられたであろう傷を負って"

霊体が俺を囲み、よく見ると村の建物は朽ち、血で汚れていて
…これが村の正体だったか。
遠くで俺を呼ぶ声が聞こえて、反射的にそちらの方へ木に上がって枝を蹴り向かうと
夜に俺に忠告をした老人の姿。生きている者だったか

「兄ちゃん!大丈夫か」
「爺さん、これが村の正体か」
「ああ、この村は呪われてる。毎日毎日活きの良い人間を招いては…いや」

この村はずっと繰り返してんだ。
そう悲しそうに呟く爺さんは

「何であんたはここに住み続ける?」

疑問に思った事を聞いて見れば、俯いて気まずそうに。

「俺が村人を殺した。狂った者だったんだよ…」

唯一の村の生き残りが犯人だったのか
償いにと村に住んでいたら気付けばその村は村人が戻り夜には彷徨う

「兄ちゃん、行くのか?」
「ああ、尾張に主がいるのでな」

この村から出て空気が変わって思う
あの老人も村に囚われてるのだな、と
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