第4章 番外編
2016ホラー企画:百地雹牙
今回の任務は北へ文を届ける事。
尾張に日帰りでは戻れないのでどこか廃屋ででも休もう
記憶にある忍が使う小屋を目指し木の枝を蹴っていると
女の悲鳴?ざっと、足を止めてその方を見ると男たちに追われる娘
「チッ、山賊か」
お市様なら考える隙も無く山賊を成敗しているだろう。
人の良い主を持っているせいなのか何なのか
一瞬で娘と男達の間に入り、俺の登場に怯んだ奴片っ端から気絶させた
まあ、手刀じゃ折れても生きてるか、賊は殺した方が良いかもしれんが・・・
どう処理したものか少し考えていると「あの・・・」と小さく声を掛けられ
しまった。娘の存在を忘れていた。
「あの、危ない所をありがとうございました」
「気にするな、こんな夕時に1人旅か?」
「いえ、近くの村の者です。山菜を取りに入ったら追われてしまって」
近くの村?思ったより道が逸れていたのか。
また襲われては面倒だと、賊を凍らせてから娘を村に送り届けたのだが・・・
「俺は忍の身だから無理だ」
「そんな事仰らないで下さい、せめてものお礼を」
「娘を助けて下さった礼だけでもさせてください」
娘の父親が泊まって行けと正直しつこい。
この目の色と髪の色でこんなに手厚く持て成されたのなんざ初めてだぞ
父子のしつこい説得に渋々折れ、だが。
村外れの空き家を使わせて貰うとして何とか納得して貰った。
村の者も気さくで
「よう、忍の兄ちゃん!梅ちゃん助けてくれたんだって?」
どう反応して良いか分からない。
何でこうも忍に気楽に話しかけて来るんだこの村の者達は!
どうも慣れぬ待遇にぎこちない俺に笑う村人
木の上に逃げて村を眺めていると1人の老人が木の根元に座り声を掛けて来た。
「・・・忍の兄ちゃん、悪いこたぁ言わねえ・・・真夜中が来る前に移動した方が良い」
「俺の容姿か?」
「否、兄ちゃんの容姿は生まれつきだろう、問題は村の方さ」
村の問題?こんなに人情に溢れた珍しい村に問題があるのか?
「昔、1人の狂った男が斧を持ち。村人を襲ったのさ」
老人は思い出すかの様に空を仰ぎ、ぽつりぽつりと零す
「1軒1軒家に押し入り女子供関係無く村人の頭をかち割って、皆殺しにしたんだよ」
はて、ここら辺でそんな物騒な話は聞いた事無い。