第4章 番外編
あの方が欲しい、あの方に会いたい。
死して尚彷徨う娘は、黒羽の影を追い成仏できずにいた
死してから数日、黒羽を店で見かけ嬉しくなり霊体ながらも
店先に出て、固まった。
とても美しい娘に腕を絡まれ、父と話す姿に衝撃を受けた
そうね、貴方様はいつも愛しい人にお土産を買っていったわ
いつかその方を連れて来て見てもおかしくなかった
あああ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!
分かっては居た。けれど認めたく無かったわ
暴漢達に穢され行き場を失った
この心の隙間を癒していたのは貴方の存在だけ!
「黒羽」
「はい?」
女が何かに気付き黒羽って名前だったのね
名を聞いた事無かったわ。私ったら
黒羽様に耳打ちをした瞬間。
死んで誰にも見えなくなった私と目が合った気がした。
嗚呼、恋しい。嗚呼、愛しい
あの方に会いたくて、あの方に会えたのに
あの方達に着いて行ったら安土城
黒羽様は忍だと言う事実よりも、お姫様の護衛だったなんて
あの美しい姫が黒羽様の想い人?
深夜になり、先に就寝すると言って移動する黒羽様を追いかけて
ピタリとある部屋の前で止まった?
「慕って下さるのは嬉しいですが、忍の身。貴女の想いに応える訳にはいきません」
黒羽様はまっすぐ、私を見つめながら
生きてる人間に目を合わせられ、鼓動が、想いが弾けそうになって
黒羽様の周囲に黒い闇が現れた。
こ・・・れは・・・?
「このままでは貴女は姫様を傷付ける存在に成り得ましょう」
せめて、私の手で散って下さいね。
ズブリ
闇を纏ったクナイが私の首を掻き切って
私の視界も闇に消えた。
「姫様、お騒がせ致しました」
「ううん、あの子はちゃんと根の国にいったから」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げた黒羽に微笑み
手を握ってやると、初めての経験だったからか少し動揺しているようで。
「あの音はあの女の想いなんですかねえ」
「そう言う事になるね」
黒羽モテモテだねーと茶化す姫様に少し笑って
再び頭を下げた。