第4章 番外編
2016ホラー企画:篠山黒羽
以前から、尾張のこの城下で見かける内に。
お慕いしてる方がおります
私はしがない小物売りの娘。
あの方はこの町に来る度に、良い方がいるのかふんわりと優しい顔で
うちの商品を買って行く
父は、あの方は身分の高い方だから粗相をしてはいけないと
お父様、ごめんなさい。
私は、黒い滑らかな長い髪。金色に輝く瞳が美しい方に焦がれております。
あの方が欲しくて欲しくて堪らないのです。
パチッ
プツッ
バチン
「また?」
「またですね」
最近、やたらと原因不明のラップ音が響き
執務をしていた市は、顔を上げて眉間に皺を寄せる
従者の忍、黒羽の肩に手を触れるとラップ音は悲鳴の様な音を立てて消えた
それに雹牙と昴は顔を顰める
「黒羽さんどこか戦場跡でも通りました?」
「またお前が憑けて来たのか」
「私もサッパリ、任務をこなして城下で姫様へのお土産買って、戻ってるだけですし」
「ああ、あの店か」
忍3人向き合って何言い合いしてるんだか。
市は何か心当たりがあるのか、首をこてりと傾げて筆を走らせる。
次の日、何故か町娘の格好をした市と
普段町に行く時の格好をさせられた3人で城下に下りてきた
「姫様?あの、どちらへ?」
「いつも行くって言うお土産屋さんに連れてってくれる?」
「俺達も変装する意味は?」
「雹牙と昴は護衛です」
いつもの姫様の、視察だろうか?
だけど町娘の着物を着なくても良いだろうに
そして何故か黒羽の腕を組んで歩く状態になって
それこそ首を傾げざるをえない。
言われた通りに店に案内すると、店主が黒羽の顔に気付き。
隣に居る姫様を見て頭を下げる・・・何だか、背が寒く感じるのは気のせいだろうか
「黒羽様、お市様、この様な小物屋に足を運んで頂き誠に感謝致します」
妙な違和感が黒羽を襲う、この店に来た時。
いつも私の接客をしていた・・・
「店主」
「はい?」
「娘さんはどうしたんです?」
今まで何度も立ち寄ったけれどいつもこの店主の娘が接客をしていた。
今日は居ない?
拭えぬ嫌な予感は、突然涙を流し始めた店主の表情が物語っている
「くっ、お市様申し訳ございませ」
「市は大丈夫、娘さんに何があったの?」
姫様に支えられた店主がぽつりぽつりと言葉を零し、驚いた
娘は先日、暴漢に襲われ殺されたのだと。