第4章 番外編
2016母の日
抜き足差し足忍び足。
気配を消してある人の居る部屋へと向かっている途中でガシッと
首根っこを掴まれて、猫の子の様にぷらーんと
こんな事する人うちに1人しか居ないじゃん!!
「雹牙~!!」
「何やってるんだお前は」
「お市様何やってるんですかー?」
ひそひそ声で、昴まで居てびっくり、と言う事は黒羽は?来てないよな?と
きょろきょろと周囲を見渡していると
雹牙にアホの子を見るかの様に溜め息を吐かれました。
ええい、黙らっしゃい!!
「黒羽は信長公に呼ばれて行ってる、何だ?また母の日か?」
「母の日?」
「分かって言ってるよね雹牙って」
やっと地面に降ろされて、昴に母の日の説明をすると
「黒羽さん男性ですよね?」
男性だけども~!黒羽がいかにお母さんらしいかを熱弁すると
縁側に転がって大爆笑し始めた。ちょ、しー!!静かに!
「だって黒羽さんが母親…!ぷっくくくく!」
「お市様、其れで去年、黒羽に説教されてなかったか?」
「過去は振り返らない!!」
「うっ、っげほっげほ!あははははは!」
「昴うううううう」
ひそひそ話だけど何か漫才みたいじゃないかもー!!
べしーっと昴の頭を叩いて黙らせると痛みで固まった昴を足蹴にした雹牙は
「濃姫様には渡したのか?」
「あ、うん。凄く喜んでた」
南蛮の商人さんと職人さんと掛け合って蝶のブローチみたいなの作ったんだよね。
義姉さま狂喜乱舞で抱き潰されるかと思いました。
「黒羽には何を贈るつもりなんだ?」
「ひょ…がさん、痛い、脇腹」
「馬鹿みたいに笑い転げるからだ阿呆」
ぐりぐり踏んずけられてる昴は置いといて
新しい武器を研ぐ砥石と、髪紐と、忍装束の替えと…
雹牙に見せるとふと雹牙の視線が上を見る
「だそうだ、今年は許してやったらどうだ?」
「へっ」
まさか…と、恐る恐る背後に首を向けると
木の上にでも居たのかガサガサと葉の音を立てて
黒羽が、降りて来たああああ!?
「全く、今年もそう用意されては怒れないじゃないですか
…姫様、婆娑羅で逃げようとしなくても良いですよ」
「にぎゃっ」
怒らないって言っといてゴンって!ゴンって頭をグーで!
痛くて婆娑羅引っ込んだよ!!
「今年は怒りません、ただ。今年も"母親の様な"説教を覚悟しておいてくださいね?」
にこりと笑う黒羽の背後に鬼が居た。