第2章 本編1〜70
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小太郎と二人きりになってしまったので
御茶を2人分淹れてクッキーを出して2人でぽりぽり。
今日氏政お爺様何の用で来たんだろうね?
ふと小太郎の手に目が行って、随分鍛練したんだろうなぁ
傷跡やタコが沢山。
触れようと手を伸ばして小太郎の手を取ると
びくりと小太郎の肩が跳ねる
「ん?何かあった?」
「(否、余り市の様な者が触れて良い手ではない)」
あれか、よくある「俺の手は血で汚れてるから」ってやつか
そんなの私だって戦出て婆娑羅で人を殺めてるのだから私も一緒。
そう言って小太郎の手をぎゅうぎゅう
手を広げさせて貰うと、わお。大きい手
私のと手を合わせてみると私小さいね
忍刀を使う掌にはタコが凄いけど
まあそんなに掌って傷負う事無いから綺麗だこと。
むにむにと掌の筋肉を指圧してたら首を傾げられた
「ここ、ぐっと押されて痛かったら目が疲れてるはずなんだけど痛くない?」
「(否、無いな)」
小太郎、流石伝説の忍。その兜被ってて目疲れてないとかやるなあ。
徐に、隙が出来た途端にぱっと手を離されて逃げられた!
「(あまり触れて良いモノではない)」
「市は気にしてないのに」
いや、そうじゃなく、と紡がれた口の動きに市は首をかしげるが
この人が生きていくのに厳しい時代
弱きを助け、手を伸ばし続け救い続ける姫は
最早、尾張だけの宝ではない。
この日ノ本に無くてはならない至宝だと自覚していない。
氏政様が仰っていた
この姫こそ天より使わされたお方なのだと。
にっこり微笑む
この美しい笑顔こそ守らねばならない
日ノ本の唯一の神の御使い。
触れられ、微笑まれる度に込み上げる
この感情は何と言うのだろうか?