第2章 本編1〜70
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「よっ、捕まえたぁ!」
親猪、うり坊合わせて4頭捕まえた昴は「大量!」と呑気に、にっと笑う
ふと周りを見渡すと、大分離れてしまったと顔を青くさせ
「やばい、黒羽さんと雹牙さんに怒られ・・・」
カサリ、遠くの方に人気がある
捕まえた獲物を隠し気配を消して高い木の上から様子を見ると
身なりの薄汚い男達が安芸の民であろう女子供を捕まえて洞窟のような所に押し込んでる
あれが神楽殿の言ってた盗賊か、胸くそ悪い
お市様に使える様に成ってから、そう言う感情が芽生えてきた。
今までは道具として感情を殺し動いて来たと言うのに。
もしこの女子供の中にお市様が居たら、自分を押さえる自信が無い。
様子を見て盗賊を捕らえ、女子供を保護するか・・・
きっと元就様も盗賊には手を焼いてるに違いない
「兄貴!すげえ別嬪を捕らえましたぜ!」
「傷を付けるなよ?商品価値が下がる」
成る程、人身売買か。
「下衆め・・・」
ぼそりと紡いだ言葉は誰にも拾われず
別嬪と呼ばれた娘に目を向けると思わず叫びそうになった
「ちょ、黒羽さんと雹牙さん?」
女に化けてる2人に唖然とし、2人が一瞬俺を見た
(援護しろ、か。一瞬でバレるなんて)
やっぱ勝てないなぁと溜め息を吐いて
盗賊達が隙を見せる夜まで、隠れ身を潜めた。
奴等は獲物が大量だと酒を浴びる程飲み上機嫌
昴は夜の闇に紛れて入り口の近くに居る手下の咽を掻っ切って騒がれぬ様に殺す
洞窟にお粗末に付けられて居た扉を破壊して侵入すると
俺を見て目を見開く。
ばさり、と背後で着物の落ちる音
黒羽と雹牙も変装を解いて女子供を守る様に背で庇うのを気配で察した
「なっ!その装束、織田の忍か!」
「おや、私達有名ですね」
「忍が有名でどうする」