第2章 本編1〜70
28
「どうしても帰るのか?」
「えと、かすが?」
がっしりと、抱き締められてちょっと困惑。
そろそろ帰らなきゃねー、と謙信公とお話して貿易の書類とか片付けてたら
むすーっとした顔のかすがに抱き付かれて
もうちょっと此処に居ろコールが凄いのです。
謙信公、微笑ましげに見てないで助けて下さい
がすがが此処に住めばいいのにとかぶつくさ言い始めたからへるぷー
「おい、かすが。気持ちはまぁ分からぬでもない。だがお市様は仕事で此方に来ているんだ」
「此れから貿易を行うのですから、其れを口実に安土城に遊びに来たらどうです?姫様もお喜びになられますよ?」
「むう・・・」
黒羽、雹牙・・・君達の口調がまるでとーちゃんとかーちゃんなんだが
どこからツッコミ入れていいかな?
無言で、かすががゆっくり強く抱き締めてた手を離して。
「・・・会いに行くからな、また料理、教えろ」
「うん、必ずね」
むすっとしたかすがの顔を覗き込んで、お互いに笑って。
良かった、ご機嫌斜めさんは直った様だ。
「わたくしのうつくしきつるぎ、いいともがきができて、よかったですね」
「はっ謙信様、とんだ醜態をお見せしました!」
「よいのですよ、つるぎがしあわせなのであれば、わたくしもうれしいです」
「け、謙信様!」
うむ、滞在中この薔薇がぶわーってなるの大分見慣れた。
かすがはお花の妖精さんなんだねきっと。
不意にばっと、真剣な眼差しで手を掴まれたと思ったら
「甲斐のバカ猿飛佐助に気をつけろ!お前は美しいのだからすぐ手込めにされるぞ!」
そんな事言うもんだから黒羽と雹牙が噴出して、珍しく黒羽が口を歪ませながら畳をぺしぺし叩き
雹牙は不自然に口布を上げて、握りこぶしを作りながらぷるぷると震えて。
いや、そんなに耐えなくて良いじゃないの2人とも。
謙信公の前だから耐えるしかないのね、分かった。
「?どうした。お前たち?」
「えと、突発性の腹筋の・・・腹痛?」
取りあえず、かすがの前で佐助の話は止めとこうね
2人が辛そうで可哀想です。
うちなら大爆笑できるから良いんだけど。
此処はよそ様のお宅ですんで。
謙信公に書類にサインして貰ったし。さあ、ぼちぼち帰ろうか、尾張に。