第2章 本編1〜70
「驚いたぞ、急に伝説と言われる風魔の当主が来たんだから」
「ごめんなさい、三太夫さま」
「いや、こいつ等の為に動いてくれてたんだろ?逆に感謝する」
「丹波様…一体」
「文に書いてあんだろ。お前等に二つ名を新しく姫さんが考えて付けてくれたんだよ」
再び文の最後の文字を見て。
「月影夜叉…篠山黒羽」
「氷原竜灯…百地雹牙」
文にはその意味も書いてあった…夜叉として力を奮いながらも月の光の様に主を包む
雹牙には消える事の無い焔として氷を照らすという言葉に
瞳から一滴、何かが零れた。
「ふふ、黒羽、雹牙いつもありがとね」
いつもの微笑みで、白い指で私の目じりを拭う仕草に。嗚呼私も雹牙も喜んでいるんだ。
「良い主を持ったな2人共」
「だから私は撫でられる年ではないと」
「…」
雹牙がずっと無言なのに気付いて、目線を向けたら。
姫様にくすくすと笑われて、姫様に目元を拭われながら顔を手で覆って。
「今日からお前等のこの二つ名と本名を広める。覚悟しとけよ?」
「チッ、分かった」
暫し忙しくなりそうですね。幼き頃からの相棒…百地雹牙?
「あ、三太夫さま」
「おう、少し灸を据えていいぞ」
2人の謎の言葉に首を傾げて。風魔と姫様、4人で屋敷から出たら・・・面倒ですね
先ほど見られた奴等が仲間を呼びましたか
姫様の前で変な事を言わないでくれると有難いんですがね。
「ふふふふふ」
「姫様?」「お市様?」
突然笑い出した姫様が…!三太夫様、灸を据えるってまさか
ぶわりと、姫様の婆娑羅が周囲を黒く染め上げ私達を敵視してた者共の気配が恐怖に変わる。
「囀るだけの小鳥以下の脳無しがぁ、余の忍を敵視するとは片腹痛いわ!!」
姫様の闇の手が潜んで居た雑魚達を掴み上げ婆娑羅で力を吸い取った後。小太郎が体術で蹴り上げて地に落とす。
「是非もなし!」
「(フン)」
姫様は、私達が敵視されているのを。感じ取っていたのですか
本気の婆娑羅技って姫様容赦が無いですね本当に
帰り道小太郎の背に乗って、私と雹牙と4人で平走してる時に
「怒らないの?」
不思議そうに聞いてくる姫様に笑って
「お市様が十分に怒っていただろう」
確かに、あの惨状では怒る気も失せますね。
「姫様」
「なあに?」
「ありがとうございます」
本当に、良い主に恵まれましたね。雹牙も。