第1章 幼少期
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竹中さまと慶松の容態が、もう私の出番は無くなったと見て。
最後のお薬をお渡しした後。尾張に帰りました。
皆が私のご飯が食べれなくなると拗ねてたけど、女中さんにちゃんとレシピ教えたから大丈夫でしょ?
安土城に到着してパタパタと走り、兄さまの部屋に直行です!
私の足音が聞こえてたのかスパーンと襖を開けたら嬉しそうに微笑まれました。
「兄さま、義姉さま、ただいま!」
「よく帰ったぁ」
「お帰りなさい、お市、黒羽と雹牙もお疲れ様」
「戻りました、信長公、濃姫様」
大阪で起きた事、佐吉、慶松、弥三郎、松寿丸、三郎四郎の事をお話したら
ほんの少し兄さまの顔が笑っている。
これはずっと一緒に居ないと分からない人には分からない程度の笑み。
「そんなに楽しかったのね、ねねさんは元気にしていたかしら?」
「うん、とっても優しい方、だったよ」
竹中さまの「嫁にこないか」発言は言うのやめとこ、兄さまがキレそうだから。
「市ぃ」
「なあに?兄さま」
兄さまが胡坐をかいてる上に乗って、私は兄さまにベッタリです。
「うぬに頼みたい事がある」
ん?兄さまが頼み事?私に?
兄さまが案内してくれた客間に居た人物に驚いた。そう言えばこの子織田に捕虜に来るんだっけ。
「の、信長公?」
「市ぃ、好きにしてよい」
え、兄さま。私とこの子を置いて行ってしまったよ?!
丸投げですか!?
「・・・おめえさんは誰だ?」
「織田信長が妹、市です」
自己紹介をしたら彼の目が大きく開かれる。驚いたかな?私が急にここに来て
「ワシは・・・松平の竹千代と言う」
「うん、仲良くしてね」
そう言って握手したらまたまた驚かれた。
「お市殿は優しいな」
「そう?」
兄さまは、今川様の所へ行く途中に、父の家臣に裏切られ
ここに送り込まれたと言ってらっしゃいました
ぶっちゃけ、兄さまそう言うの嫌いなんだよね。
「という訳で、さっくり松平の裏切り者を、暗殺しちゃいましょうか」
「お前ぇ言う事が恐ろしいな!!」
「市も、兄さまも、そういうの嫌い、だもの」
竹千代君、顔が驚き過ぎて凄い事になってるよ?
「思ってたよりも・・・信長公もお市殿も、優しいんだな」
「兄さまの二つ名が、1人歩きしてるだけ」
兄さまのお友達が面白がって広めたってのもあるけどね。
本人は面白がってるけど・・・