第1章 幼少期
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「下野国に行きたいな」
「隣だが尾張とは逆方向だぞお市様」
いやあ、奥州からこっち来る時に突っ切ってきちゃったけどちょっと行きたい用事が・・・
いや、会いたい子が居てさぁ
ふと場所を思い出したんですよ。
「兄さまに、遅くなるって文送る、から」
「そう言う問題じゃないのですが」
もうすぐ雪が降るからでしょ?
お隣の国だから問題無いと思うけど
「会いたいと思う者は誰だ?」
「宇都宮さま、同じ頃の男の子、居たはずだけど」
「ああ、あの者ですか」
え、黒羽と雹牙知ってるの?何かあったのかな
「5年程前に宇都宮の当主が死に、嫡男は家臣の裏切りにより城を追い出されている」
「え・・・」
思わぬ事実に驚いた。5年前って言ったら5歳だよね?
そんな小さい時に城を追い出されたの?
「その子、今どうしてるの?」
「家臣の芳賀高定が城を取り戻さんと保護している状況だ」
親が死んだからって裏切りにあって、宇都宮の腹心に護られてる状態?
あの人ってそんな苦労人だったのか。
乗っ取られたって話を聞いて妙にムカムカしてきた
こういう弱い所につけ込んで反逆とか嫌いなんだよね。
だから松寿丸にそんな思いさせたくなくて安芸に行ってフラグぼっきり折って来たのに。
「芳賀高定さまって下野に居るの?」
「真岡城が居城なので、そこに子を匿っております」
「もう行く事は決定なのか」
「姫様ですし・・・」
黒羽だんだん私の暴走に慣れてきたよね。雹牙はツッコミ体質?
私の行動にいちいち突っ込まずにはいられないようです。
「文で先触れするよりも私が先に行って事情を説明し、城下に留まりましょう」
「旅先で訪れた、って事にする、のね」
「その方が不自然ではないからな」
という訳で、真岡城に向かいますか。
宇都宮広綱は病弱だって話をどっかで聞いたから、薬草を採りつつお薬作りながら。
先に走っていく黒羽を見送ってのんびりと真岡城へ向かった。