第8章 確かな想い
「待たせてごめんなさい、レナちゃん」
貴方はやっぱり人のことばかり。
忙しい貴方を呼んだのは私の方で、待ち合わせ時間もまだまだ早いのに…
そして、やっぱりかっこいい。
ラフめな黒を基調としたまふくんに、私はついときめいてしまった。
そんな私の気持ちを知らないまふくんは、何を食べたいか、寒くないか、と私に優しくしてくれるんだ。
あぁ、もう認めてしまおうか。
「まふくん、食事前に付き合ってほしい所があるんですが… 」
「 ? 」
「… ここは 」
「私の通う大学です」
私は戸惑うまふくんの手首を失礼かと思いながらも掴ませて頂き、無理言って今日借りることの出来たホールへと向かう。
道中、彼が口を開くことはなかった。
彼にも色々あったのだと思う。
私なんかよりも深く重い過去が…
正直ここに来てもらうのも気が引けたけど、今の私をありのままに見て欲しかった。
学校での私と、歌い手の私、踊り手の私
どれもちゃんと私だけど、全ての私を知る者は私しかいない…
勝手かもしれない。
それでも、私は貴方に見て欲しかった。
「まふくん、いきなり連れて来てごめんなさい… でも、よかったら今の私を見て下さい」
今、ここが私のステージになる。
あぁ緊張でおかしくなりそう。
目の前には観客はひとり。
憧れて止まない貴方の存在は、それだけでは表せない人物で今の私には高すぎる壁となった。
けれど、それ以上に私は乗り越えたい。
貴方に会って、強く思うようになった。
きっと、まだ越えられない。
高い壁だけではなく、私の目の前にはまだまだいくつも壁があって、今の私ではその低い壁すら越えられないのだろう。
わかってる、わかってるんだよ。
だから越えたいと思ったんだ。
気づいてしまったから、もう戻れない。
私はいつか貴方と同じ場所に立ちたい!
そう思ったら壁なんて不思議と怖くなくなった。
貴方への
“ すき ”
が私をこんなにも強くしてくれた
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