第6章 はじめての言葉
「浦田さん結局感想言ってあげないんだもんなぁ… あんなに何回もリピートして観てたのにさぁ」
「ん?オレはいいの」
「わからん」
オレにとって妹のような存在のレナ。
出会いとか語るつもりはないが、最初から今の今まで放って置けない奴なんだよな。
事前準備してくるわりに爪が甘くて、どこかで躓くのはあいつの性格の一部なんだろうか… 昔から変わらない。
今回の踊ってみたも踊りは悪くなかった。
曲に合った柔らかい動きで、時折見せる切ない表情も「お前女優かよ」ってなるくらいの演技力だった。
もっと評価されるべき人材だろう。
ただ編集力はまだまだだな。
別に踊ってみただし飾り気なくてもいいんだが、多少エフェクトかけて雰囲気作ったり、名前を覚えてもらいたいなら動画の端にでも入れておけばいいものを…
まぁ、実際そのへんは経験か。
「浦田さんってレナちゃんのこと好きなんすか?」
「あ?」
「何だかんだ可愛がってるのわかるし、ご褒美とか言って奢ってたし」
「そらるさんと同じこと言うなよ。
ただの放って置けない妹だから」
そう、手のかかる妹だ。
あいつはまふやさかたんのような優しい奴と一緒になった方がいい。
散々辛いことがあったんだ…
今はやっと楽しいことを見つけ、救われた音楽に向かって必死に走ってるあいつを、オレは守ってやりたい。
ただ、それだけなんだ。
それだけだ。
つづく