第6章 はじめての言葉
「さかたん、これ半分食わね?」
「いいけど浦田さんハラ減ってないの?」
「ちっと多いんだよな、ほい食って」
「わーい!いただきまーす!」
え、なに…
なんなの、この待て状態!
渉くんと坂田さんが「これ食べて」「じゃあこれあげます」的なやり取りをいつまで黙って見てればいいの?!
渉くんのいじわる!!
「あ… う、浦田さん? 」
何かを察してくれたんだろうか、坂田さんがアイコンタクトで何かを浦田さんに伝えようとしている。
まふくんに続き、坂田さんも優しい人!
「さかたん甘えんぼさんだな」
「え?」
「ほら、あーん」
「えぇぇぇ!? あ、あーん… 」
うわぁ、貴方たちもラブラブなんですか?
渉くんがそっちに興味があったとは私知らなかったなー、でも応援してあげるからこれからも私のことよろしくね!
って違う!多分坂田さんも言いたかったことは、あーんしてほしかったことじゃないはず。
そう思いたい。
「もぐもぐ… はっ!
レナちゃん、投稿した踊ってみた観たよ!
綺麗で切なくて、凄く良かったです!」
坂田さんは流されまいと自ら私の踊りの感想を言ってくれた。 わぁ本当に優しい人!
少し照れているのか敬語とタメ語が混ざりながらも話す坂田さんが可愛く思えた。
それに初めて面と向かって言われた感想。
その言葉はただの「良かったよ」だけでも私には大きな言葉になったと思う。
坂田さんのちゃんと観てくれたであろう言葉に胸が熱くなった。
「み、観てくれたんですか?!
ありがとうございます!!嬉しい… 」
「浦田さんが観てたから一緒に観させてもらったんだ! これから応援してっから、頑張れ!」
「は、はい!
ありがとうございます!! 」
渉くんが連れて来てくれた坂田さんはとても可愛くて優しい人、でもお兄ちゃんみたいな楽しい人です。
可愛くて優しいけど、またまふくんとは違うタイプの人で、こんな時貴方のことを思い出すのは何故なんだろう…。
何故なんだろうね。
その答えはこの時の私には空白のまま。
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