第6章 はじめての言葉
踊ってみたの新作を投稿したレナ。
自分にご褒美と近くのお洒落なカフェでアフタヌーンティーを堪能していた。
珈琲より紅茶派な彼女にとって至福な一時なのだ。
天気も良好でぽかぽか日和な今日のような日はテラスでその至福の一時を過ごすのが楽しみだ。
「相変わらず暇な大学生だな」
「!? わ、渉くん! 」
柵を挟んだ道からかけられた声には聞き覚えがあり顔を上げると、そこ立っていたのは毎度お世話になっている浦田だった。
手を軽く上げたため挨拶をして去ってくのかと思いきや、カフェの中へと入っていく浦田。
この後は容易に想像がつくもので…
「相席お邪魔しまーす」
「ですよねー」
しかし、そこに座ったのは浦田だけではなかった。
浦田の仕事仲間だろうか、マスクをしている男性が申し訳なさそうに浦田の隣へと腰をかけた。
「あーさかたんに会うの初めてか?」
「うん、さかたんってことは… 渉くんのチームメイトの坂田さん?
はじめまして、レナといいます」
「あ、は、はじめまして!
あほの坂田やってます坂田です!!」
「さかたんどもりすぎ」
いきなりこの状況で溶け込むのは難しいのではないかと坂田に同情するレナ。
しかし、浦田の性格を知るレナにはこの状況ですら彼の思惑通りなのではないか、そうも読んでしまうのだ。
彼は面倒見もよくリーダー気質だが、慣れた相手には意地悪というか人をおちょくって反応を見てるのが好きなタイプだ。
坂田もそのうちの1人なのではないかと察する。
「渉くんはどうしてここに?」
「ん?別に通りすがりにいいカフェがあるなー、わーレナがいるじゃん、遊び相手にしよう、的な」
「何さ遊び相手にってー!」
「ついでに踊ってみたも投稿してたし、感想でも言ってやろうかなー、とか」
「は!」
浦田の最後の言葉に黙り込むレナ。
正直近しい人から感想という感想をもらったことのないレナにとって、その言葉は甘美なるお誘いのように聞こえたのだ。
怖いような、楽しみなような、そんな複雑な気持ちで次の言葉を待っていると、何ともタイミングよく店員が注文したものを運んで来た。
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