第5章 ライン交換しませんか?
「あの、やっぱりいきなりまずかったですか?」
今、私の耳は「ライン交換しませんか?」そう処理した。
これは私の都合のいい聴こえ方だ。
だって、初対面でまふくんがライン交換なんて…
しかも同じ歌い手とはいえ、ファンにそんなこと言うわけないもの。
でも望みを捨てられないのも事実で、私は自分の耳に都合よく従った。
「ライン交換、って言いました?」
「はい、言いました。
よければ一緒に動画とかやりましょ!
僕のやり方どんどんマネしていいんで」
あぁ、この人はなんて優しい人なんだろう。
そんなんじゃ言い表せないくらい、心優しくてお人好しで親切で… 人の悪意を知っているだろうに無償の優しさを振り撒いてくれる。
自分が本当に小さな存在に感じる。
それだけ、彼の存在は大きすぎる。
「いいんですか?ほんとに」
「もちろんです! 歌えれば僕の楽曲も、あ!踊ってみたでも使って下さいね!」
「本当に凄い人ですね、まふくんは」
「? そう、ですか? 」
「はい!ライン交換しましょう!
節度は知ってるつもりですが、覚悟してて下さいね!」
こんなチャンス逃すなんて、この界隈で本気でやりたいなら彼の提案に乗るべきだよね。
アンチは覚悟の上!
利用できることは利用する。
でも、ちゃんといつか恩返ししますから…
その時はちゃんと受け取ってもらえるような恩返しをしよう。
心優しい貴方はもしかしたら更にお返しを考えてしまうだろうから。
私の憧れた白い天使は
やっぱり天使でした。
「悪用するなよ、ほら」
反してこちらの白いはんぺんさんは、警戒心バリバリ張り詰めた黒いはんぺんでした。
でも、知ってます。
貴方の警戒心はまふくんのことが大事故に張り詰めているのだと…
結果、テリトリー内の仲間には優しい。
(ライン教えてくれたし)
つづく