第5章 ライン交換しませんか?
レナの発言によって討論が始まってしまった、浦田とまふまふとそらる。
そらるに至っては警戒していたはずの彼女だというのに、この負けないオーラ。
彼らの提案は各々こうだ。
まふまふは猫。
そらるはリス。
浦田は犬。
まふまふとそらるは初対面のため、あくまで第一印象にすぎない。
浦田はある程度交流があるため1番もっともなイメージなのだが、意外にもまふまふもそらるも意見を譲らなかった。
「だいたい猫ってありきたりすぎ。
モチーフにしてる奴も多いし、まふも使ってる」
「それな!」
「えぇー… 2人のモチーフが独特なんですよー」
本人置いてきぼりで会話を進める3人。
はじめは険悪なムードになりかねないとあわあわしていたレナだが、意外と和気あいあいとした空気に少しだけ安心する。
そしてふと、我に返ってしまう。
自分は今After the Rainの住む部屋にいて、憧れのまふまふとそらるが自分のことについて話している。
幸せどころか本当に天国なのではないだろうか、そう思える程の空間に今自分はいるのだ。
普通に接している兄のような浦田もどちらかといえば彼らと同じ世界の人で、所謂成功者だ。
自分とは違う。
そんなことを考え出すと負のループが発生するもので、彼女の頭の中には浦田と話すことも場違いなのではないか、他の歌い手からすればもしくはリスナーからすれば叩かれかねない状態だと、マイナス思考が先立ってしまう。
一度大きなトラウマを作ると、そこはもうなかなか塞がらない落とし穴で… 何度も陥る可能性が高い。
彼女にはそのトラウマがある。
いや、誰しもそんなトラウマを持って生きているのだろう。
そうは思っても、そこから抜け出せない。
それは自分が弱いからなのか、落とし穴が大きすぎるのか、堕ちている自分には計り知れない。
「あのー大丈夫、ですか?」
「!?」
そこから抜け出すには、誰かの手がないと…
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