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【雑多作品置き場】short story

第6章 【太宰治】恋と革命【文スト】




歩く度にふわふわと揺れる内巻きの茶毛が
風に乗って揺れる

紺色のブレザーに包まれた体は細いのにもう、充分に【大人】らしい


「相変わらずいい女だな、手前は」

人混みの中ではっきりと聞こえた言葉に視線を向ける
なぜ自分に向けられているとわかったかと言うと
その声は、長年よく知っているものだったから


『中也』

振り返ると、チョーカーとハットの特徴的な
中性的な顔立ちの男と瞳がかち合う
薄い灰色を混ぜた青目、オレンジ色の髪に映えて綺麗だと思う。

こんなに人混みに溢れた横浜中華街の中でも
お互いの姿だけを認識し、歩みを寄せると
やっぱり、この男とは切っても切れない仲なんじゃないかと不安になった。



『ポートマフィア様が、こんな所にいてもいいの?』

黒い手袋をはめた指先で私の毛先を弄ぶ中也に、半ば呆れながら声をかけると、
彼の眉がピクリと動いた


「かまやしねぇよ」

指先を離れた毛束は鎖骨の上に戻っていく


「最近も、まだ太宰の木偶とつるんでんのか?」

その中也のもの言いに、ゆりなは怪訝な表情を浮かべた
『別に、つるみたくてつるんでんじゃないから』



太宰と知り合ったのは2年ほど前だっただろうか



「惚れた!一目見て…貴方に惚れてしまいました!」と…



首に縄をかけた状態で言われても、全く魅力を感じなかったことだけ鮮明に覚えている

それにしても、あの男はなんであんな所で首吊りに勤しんでいたのか
少しだけ考えて
馬鹿の思考など考えるだけ無駄だとため息を吐いた


どうして自分の周りの男はこうも物騒な奴らばかりなのだろう
半年ぶりに現れた目の前の男しかり、その首吊り男しかりだ


「俺の連絡先、また変わったから
ちょっと耳かせ」

ぐいっと二の腕あたりを掴まれて耳元に唇が触れると
11ケタの数字の羅列を告げられる

頭のメモに保存して一度うなづくと、中也は満足したように笑い

「じゃあな」と人混みの中に消えていった



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