第5章 【現パロシリーズ】cup of tea【物間寧人】
ばくん、と心臓が開いた気がした
『え…それ…』
振り返りたかったのに押さえつけられた肩
物間くんはその後何度か腰を振って、
私の背中に欲望を吐き出しす
『もの…ま…くん…』
息を整えて、物間くんの方を向くと
向いた時には、もう
またいつもの食えない顔で、
そっと笑っていた。
まるで、さっき聞こえた言葉が、聞き間違いだったように思えてくる
ぼやけた頭では
上手い返事も、質問も考えられず
ただ、ドコドコと音を立てる心臓を無視して
ベッドに沈んだ
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あの日から、
物間くんからの電話番号が
何度か私の携帯を鳴らしたけれど
私がそれに応えることは無かった。
家に来るかなって思ったけれど
そういう事はないまま、寝室に残っていた彼の香水の匂いも、
あっという間に消えていった。
しーくんにも、私と物間くんのことはバレることはなくて
冬がすぎ、春が来た。
しーくんは、あの出張の後、仕事の成果が認められて
主任から係長になった。
新入社員の何人かが、部署に入って来るのを任されて大変らしいけれど、とても楽しそうだ。
「すごく優秀な子なんだよね
頭もキレるし、サマーインターンの時から教えてたんだけど
もう二年目の社員並みの仕事が出来るよ。」
『すごいわね、
しーくんの教え方がいいんじゃない?』
「ゆりなは優しいな」
嬉しそうに卵焼きを口に運ぶ彼の携帯が震える
待ち受けにしている私の写真が現れた。
「あぁ、もしもし
うん、そうだな、今日はジーニスト社との会合だ
いや、ホテルは取らなくていいから、着替えを持ってきてくれるかい?
会合の店が近いから、うちに泊まっていくといい
うん、じゃあ後で」
電話を切ったしーくんが
私の方を向く
「わるい、今日その新入社員の子が泊りに来るんだけれど
いいかな?」
『うん、大丈夫よ』
後輩が泊りに来ることは今まででもよくある。
私がすることといえば、朝食の用意くらいなものだ。
カバンを受け取るしいくんが
そういえば、と口を開く
「その子、コーヒーが飲めないから
朝食は紅茶にしてくれ」
背筋を汗が伝った気がした。
fin