第25章 So Cute!【物間寧人の場合】
体育祭当日、やっぱりA組贔屓は顕著で
僕らB組は、やみくもに1位を狙わず、作戦勝ちで最後の表彰台を狙う。
やっぱり、思った通り
目先の上位に囚われたA組の奴らは、個性をフル活用して先を急いだ。
後から観察させてもらっていたのは、その【超可愛い】とやらの個性。
でも、特に何も、
何もどころか、本気で何もしてない。
ただ周りA組のやつらが馬鹿みたいに担ぎ上げてるだけ。
(A組ってバカの巣窟なんじゃないの?)
予選で僕が抱いた感想はそれだった。
騎馬戦も結局
騎馬のヤツらが、あの子を襲いたくないとかいう理由で、何も出来なかったんだけど。
A組だらけになった決勝戦
イラつきが増してA組に突っかかる。
「調子乗りすぎじゃない?A組
別に可愛い子が1人いるからって、A組が可愛いわけじゃないから
大体、俺がコピーすれば、そんな個性…」
僕がどんな大きな声で罵っても、我関せずと振り返りもしないその子に、正直苛立ってたんだと思う。
コピーしてやろう。
そう思った。
可愛いだけで、優遇されてきたんだろうけど、そんな個性、僕の前では何でもない。
無意味だって笑ってやるつもりだった…。
のに、振り返ったその子と、目が合った瞬間…
いや顔を見た瞬間、脳みそは、ある言葉に占拠されてしまう。
「かわいい」
もはやこれは、可愛いの暴力以外の何者でもなくて。
その可愛さに、あと5センチほどで届く距離の体に触れることさえできなかった。
「なに!?は?!触れないんだけど!!」
全くビクともしない右腕に、軽くパニックを起こすと、トン!と首の後ろに衝撃が走って、意識が途絶えた。