第21章 So Cute!【轟焦凍の場合】
あいつに出会ったのは、推薦入試の日のことだった。
大きな背丈の男が、大きな声で
「君!すごくかわいいっス!!!」
と叫んでいたから、何事かと思い、そちらに目を向けたのだが
なるほどな本当にかわいい。
推薦試験は、個性を試験官に見せるというもので、隣で個性発動していた八百万は、戦車を出していたし、
あの声のでかいヤツは嵐を巻き起こしていたし。オレも最大威力の氷結をして見せていたけれど、
あいつは何もせずただ立っているだけだった。
あのかわいい奴は、個性を一度も見せることなく帰っていったから、もしかしたら不合格になるかもしれねぇ…
会えるのはこれが最後かもしれねぇ
そう思ったら、俺はあいつの肩を掴んでいた。
「あ、の……」
『…あ、えっと、さっき試験受けてた…人?』
振り返った彼女はやっぱりとんでもなくかわいくて、かわいいくらいしか感想が言えないくらいかわいかった。
「そうだ、轟…轟焦凍
いきなり話しかけて、すまねぇ」
『私は、口付ゆりな!よろしくね轟くん』
笑って名前を読んでくれるゆりなも本当に可愛い。
「個性…さっき、なんで見せなかったんだ?」
『ん?あー…私無個性みたいなもんだから…』
「無個性…?」
ゆりなはそれ以上言いたくなさそうに話しを変えたから、それ以上は聞けなかったけれど
LINEを交換してほしいと頼めば快く交換してくれて
俺の、姉さんくらいしか登録のなかったLINEに、ゆりなの名前が加わった。