第17章 【夜シリーズ】イロコイ2【爆豪勝己】
そのネオンをくぐれば、私はお姫様になれる。
そんな勘違いをしていたのは、つい一年前のことだ。
どちらかと言うと、私は恵まれて育ってきたのだと思う。
大手企業の重役の父。
専業主婦の母、兄弟はいない。
中学から私立のエスカレーター式の高校、大学を卒業。
適当に内定をもらった会社で緩いOL生活。
顔も、性格を体現したのんびりとした雰囲気らしく、男性にも優しくしてもらっていると思う。
特別モテるわけじゃないけれど、困ったこともない。
そんな私が、ここに足繁く通う理由は、たった1つだけだ。
案内された席に、待たされること1時間。
お目当の彼は未だ他の席で、他の女の肩に腕を回している。
ヘルプの男性の話を半分くらい聞いて笑う。
愛想笑いではない。
そこそこ、この男性は面白いのだ。
さすが天下のクラブyuueiだと思う。
初回荒らしを友人と繰り返していた私を、この世界に引きずりこんだこの店で、
私はまだ、優雅に泳いでいる。