第16章 【夜シリーズ】イロコイ【上鳴電気】
5時になった途端、急いで帰宅すると
会社用のオフィスカジュアルは脱ぎ捨てて、夜の街に繰り出すための戦闘服に身を包む。
EmiriaWizのバッグに、タンスから取り出した札束を5個突っ込んで、タクシーに乗り込んだ。
「歌舞伎町まで」
タクシーの運転手はちらりとこちらを見て、聞こえるか聞こえないかの音量で「はい」と答える。
何度も鏡でメイクを直しているあいだにタクシーはゆっくりと、ネオン街に止まった
クラブyuueiは地下にあるお店だ。
入口の手前で黒服が迎え入れてくれて、席まで案内してくれた。-
『電気は?』
急く気持ちで、黒服に聞くと「少々お待ちください」と頭を下げる。
待つか待たないかじゃなくて、私が知りたいのは、今客についてるかついてないかだ。
首を回して辺りを見回すけれど、電気が見当たらなくて苛立ってくる。
「なーに、怖い顔してんだ?
可愛い顔が台無しになってんぞ?」
『電気!』
軽い声が後ろからして、振り向くと、電気がヒラヒラと手を振って私の席に付いてくれた。
「あれ?ヘルプ付いてなかったの?」
『いらないって言ったの
電気以外と話したくないし』
「何それ、ちょー可愛いじゃん♡」
むくれてみせると、電気は頭を撫でてくれて
くすぐったくて頬が緩む…
電気はイエローのワイシャツを第二ボタンまで外して、形の綺麗な黒のスーツを着こなしている。
首元に覗く稲妻型のネックレス…、軟骨にいくつも空いたピアス、眉のところにもひとつ。
それから、キスをする時と、ベッと舌を出すいたずらっぽい表情の時だけ分かる舌のピアス。
どれも最高に似合っていてかっこいい。