第16章 【夜シリーズ】イロコイ【上鳴電気】
私はいても立ってもいられなくなり、トイレに行くふりをして経理室を出た。
廊下を小走りに抜けて、お手洗いに行くと、個室に滑り込んでスマホを操作する。
ルルル…何コールか鳴って、電話が取られた
『もしもし?電気?』
そう問いかけるとシュルって、布が擦れる音がする。
「んー…もしもし…」
『もしもし、ゆりなだよ?』
「あーゆりなー、おはよ」
今は14時だし、全然おはようではないけれど、『おはよう』と返す。
「なに?」
少しだるそうに電気が言った。
電気は寝起きが弱くて、起きたては機嫌が悪い
『さっき「たすけて」ってLINE来たから…
どうかしたの?』
「あーー、そうそう。
ねーゆりな。今日会いたいー
今月まじピンチ、助けて…」
耳を震わせる猫なで声、甘えてる時の電気の声だ。
私はこの声が大好きで、自然に頬が緩んでしまう。
『今日?うん!行ける!
私も会いたい』
「マジ?やりぃー
さすがゆりな♡」
電気はやっと元気が出たみたいで、電話越しに笑ってくれた。
「じゃ、待ってるなー
おやすみ」
『うん!おやすみなさい』
私がおやすみを言い終わる前に、電話はブチッと切れてしまった。
昨日も遅かったのかな…、って心配になる。