第14章 【文スト】運命を見つける60秒間【江戸川乱歩】
気持ちが良すぎると、泣いてしまうんだなと
どこか夢見心地に思いながら、髪を撫でる指先に視線を持ち上げる。
繋いだ左手の薬指にそっと口付けをする乱歩さんに、さっきから浮かんでいる疑問符を投げかけた。
『ねぇ…乱歩さん…
どうして私なんですか…?』
「ん?」
『いえ…その……
乱歩さんみたいに素敵な方が、どうして異能力もない私みたいな一般人と…』
言えばいうほど沈んでいく心
少し自分を卑下しすぎだろうか?と思ったが事実なのだからしょうがない。
「んー?
理由って必要?」
『え…?』
「僕はねぇ。ゆりなさんに会う前に、君を愛しているっていうことを知っていたんだよ」
『……ちょっと、難しいです』
「そうだよね」と彼は笑う。
けれども、その言葉はひどく神聖で…優しくて
そしてくすぐったかった。
「ね、やっぱさゆりなさんの誕生日に出逢えたのって
運命なのかな?
僕がプレゼント?みたいなさ」
足をパタパタとバタつかせながら笑う彼は、さっきの色っぽさは何処へやら、可愛らしく笑う。
私はそんな彼の腕に抱かれながらフフフ、と笑った。
『もらいすぎですね、私』
時計はちょうど12時を指す。
3/19日の最後の鐘が12回なり終える間、ずっと唇が重なっていた。