第10章 【現パロシリーズ】orange【相澤消太】
太ももの高さの机、校庭から子供たちの声が少しづつ遠ざかっていく
窓の外のすぐそばにある大きな木から、セミの鳴き声が聞こえる。もうすぐ夏休みだ。
オレンジ色に包まれた教室の壁には、夢を書いた紙が貼られていて
それらをぼんやりと眺めながら、私は小さな椅子に座った。
ガラガラと木のドアが開く音がして振り返る。
「お待たせしました」
『……え、あ…はい』
目の前に立つ男に首をひねる。
私を呼び出したのは女性のはずだ。
「担任の、相澤です。
本日はお忙しい中ありがとうございます」
『え!?相澤…先生って』
「どうかしましたか」
『いえ…すみません、何でもないです。』
驚いて思わず大きな声を出してしまったゆりなは、恥ずかしくなって黒いハイネックを引き上げた。
息子から聞いていた【相澤先生】は、長いウエーブした黒髪で細身。
そのイメージだけを聞いた上に、今日の呼び出しに使われた連絡帳の文字は細く繊細で
これはもう、女の先生だと思ってしまうのも仕方ないと思う。
けれども、目の前の【相澤先生】は黒いVネックにだらりとした黒のパンツという
小学校教師とは到底思えないようなラフな出で立ちの骨っぽい男
全体的にパサついていて年齢は、私より少し上なように見えた。
「今日来ていただいたのは
コレね」
ガサガサと差し出されたのは一枚の絵
右下には息子の名前がひらがなで書かれている。
『これ…』
3人の人が書いてあるその絵は3人の絵に違いないのに、使われている面積の対比がおかしい。
真ん中に書かれた大きな男はニコニコと満面の笑みで。
その横にいる子供は口がなく、真ん中の男に追いやられるように端っこに
そのもっと端っこに書かれている女の人は泣いていた。
対比としては7:2:1くらいだろうか。
背景は真っ黒くクレヨンで塗られている
「息子さんが書いた絵です」
『………』
吐きそうな気持ち悪さが体を包んだ
これは、この絵の題名が…
胸元から心臓をえぐり出して……
「この絵から、哉太くんがご家庭で強いストレスを抱えているのではないかと思いましてね
お母様に来ていただいたんです」
哉太の名前の横に書かれた
その絵の題名は
『かぞく』