第9章 【ハイキュー】バレンタインデーイブ【及川徹】
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バレンタイン当日は、嫌味じゃないけれど
何年か前から普通の日になってしまった。
休日だろうが、平日だろうが。特に変わりない。
下駄箱を開ける前から飛び出ているリボン。
開ける前から手を添えておけば、身をかがめて拾う必要もない
「はよ」
まずは8個ほど獲得したチョコレートをカバンに詰めていると、横から声をかけられる
「おっはよー、岩ちゃん」
「毎度毎度すげーな」
「まぁねー」
少し重みを増したカバンを手に教室に向かう
「今年は何個くるんだろうな
去年はいくつもらったんだ?」
「んー…数えてないから
すぐ数えれる個数じゃないし」
「うわ、イヤな奴…」
睨みつけてくる岩ちゃんに余裕の笑みで答えるけれど、実際のところ何個もらったとかはどうでもいい。
本当に欲しい、たった一個が今日もらえないなら意味がない。
結局今年はエコバッグ2個をパンパンにしただけだった。
告白に「ありがとう」だけで返すようになったのは、いつからだろう。
どんなに可愛い子と付き合っても満たされなくなったのはいつからだろう。
何をしても、ゆりなのことを考えてしまって、最中に恋人の名前を呼び間違って…振られた事は何度あっただろう。
男子からは妬み、女子からは熱い眼差しを向けられながら、及川はただの平日を終えて家に帰る。
どっぷり日も暮れた午後8時、
家に入ろうと思った時、エンジン音がしてそちらに目を向けるとゆりなが車から降りてくるところだった。
大学生らしい水色のワンピースに白のロングコート、細い足を包むロングブーツ
最近もっぱら就活のスーツ姿ばかりだったから
久しぶりにゆりならしい格好をみて、胸が高鳴ったが、
及川は運転席に視線をずらしてムッと顔を顰める。
車に乗っているのは、涼やかな雰囲気のメガネ男子
白い外車は、上品な音を立てて走り去って行った。
ゆりなは、車を見送った後
振り返って及川を見た途端、目を丸くしたが、すぐに
『徹…、い、今帰り?遅いねー
練習頑張ってるんだ、エライエライ』
と言っていつものように微笑んだ。