第9章 【ハイキュー】バレンタインデーイブ【及川徹】
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コーヒーを入れて、ソファーに沈む
リボンを外せば、シックなデザインのチョコレートが並んでいた。
中から出てきた説明の紙を読みながら1つ、また1つと口の中に放り込んでいく。
今年も大した意味のなさそうな無難なチョコレートだ
もっと、バレンタイン限定の、ハートの形のチョコレートだとか、LOVEの印字だとか
そういうものなら淡い期待も持てるのに。
渡されたものはオールシーズンのもので、色気もへったくれもあったもんじゃない。
及川はリビングの窓から見える向かいの家を薄いカーテン越しに見つめる
今灯りがついた部屋がゆりなの…
彼が長年片思いをしている女の部屋だった。
箱の中身を半分残して蓋を閉め、冷蔵庫に入れる。
残ったコーヒーは、底に三日月を描いていた。