第1章 【キスミー番外編】クリスマス【轟、爆豪】
「……」
「……」
轟焦凍と爆豪勝己は伸ばした手をそのままに
見つめあったまま、もう3分ほどが過ぎようとしていた
流石に、周りにいる女子達も
二人を不振な目で見たり、
逆に見つめ合う二人の美男子を歓喜の目で見る者もいたり…
だがそんな周りの目に構ってられないほど
二人は、今危機的状況だった。
というのも、事の始まりは今朝のことで
「なんか、いい匂いせん?」
麗日が共同スペースで鼻をひくひくと動かす
「たしかに」
「甘い?」
首を傾げるA組生徒達
「なんの匂いだと思うよ、爆豪」
「知るか」
瀬呂の問いかけに、ソファーに浅く腰をかけ
めんどくさそうに返事をする爆豪
轟はスマホを眺めていて、
周りの話には特に興味を示していない様子
さっき送ったゆりなへの返事を待つのに全神経を向けている
この二人、土日は仮免許講習の為に寮にいないため
こうして祝日に寮にいるのは久しぶりだ
というのに、会話に参加しようともしない
その匂いのもとを探そうと、芦田が提案すると
女子と男子数名が寮内を散策し始めた。
まずは、誰かの香水ではないか
という事で、女子寮側一部屋一部屋の散策が始まったのだが
元凶は見つからず…
続いて男子寮側…
2.3.4階をまわったが全く何もなかったのだが、
5階まで来たところで
エレベーターを降りた途端、むせるような甘い匂いが広がっていて
「あ!ここだ!」
その匂いの源となっている部屋の
表札は「砂藤」
「砂藤くんーーー!なに!なに焼いてるの!?」
ノックもせずに葉隠がドアを開けると
砂藤は驚いたように目を丸くして、入って来たクラスメイトたちを見つめる
「驚くじゃねーか!
あれだよ、クリスマスケーキ
明日クリスマスだろ?」
机の上にはいくつも焼きたてのスポンジが
とてもいい香りをたてて焼きあがっている