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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第5章 ゴールドソーサー、夢の守り人


なぜここに、という疑問が浮かんだが、少年の常ならぬ様子に棚上げする。
「ヴィンセント……」
掠れた聲で呼ぶリオの様子には、以前に見覚えがあった。
浅く速い呼吸に、時折、咽喉が鳴る。
吐息に、堪え切れない微かな喘ぎが混じるのを、軀に魔獣を宿すヴィンセントの聴覚が拾う。
薄闇の中で、朱く染まった目許。慾望に潤む銀色の睛。
リオが、ヴィンセントには聞こえない、見えないと思っている数多くの情報も、ヴィンセントはとっくに拾っていた。
そして嗅覚を刺激する、蠱惑の匂い。
(発情か…)
以前に指を咥えさせたことがあったが、やはりその場凌ぎでしかなかったのだろう。
醒めた頭に、ふと、思い当たることがあった。
あの後、初めに訪れたロケット村でさっさと宿屋へ向かったリオ。
他者に依らなければ慰められることのない躰は、これまでをどうしてやり過ごしてきたのか。
ウータイで、誘いをかけるレノにとった甘い態度。
先程、ラウンジで、男達の視線を集めて待っていたのは。
まさか、と思いながら、愕然とした。
もし、そうだとしたら、本能の求めるまま他者に躰を開いてきた歴戦の少年に、先程、自分はなんと陳腐な説教を垂れたのだろう。
…いや、そんなことより。
リオの、白くなるほど強く握り締めた手に目が行った。
震えるその手を解いてやりたいという感情が沸き起こる。
いや、それは自分でない方がいい……互いの為に。
ーーだが。もう猶予は無さそうだった。
ヴィンセントは重く口を開いた。
「……リオ、私に出来ることはあるか」

望みを問われて、リオは震えた。
して欲しいことは、勿論、一つしか無い。
ずっと我慢していたが、もう、言ってしまっていいのだろうか。
この人には、ヴィンセントには、想う人がいる筈だ。
さっきも呼んでいたじゃないか。
でも、それがなんだ。いまは独りじゃないか。
旅はこの先も続くのだ。その間ずっと、この熱の処遇に頭を悩ませるのか?
目の前の男が気になる。
雄の軀。こちらを窺う貌の、その下の喉仏。首筋。
もう、無理だ。まともに考えられない。かんがえられない。
詰めた息が苦しくなって、吐き出すと、言葉が零れた。
「………………抱いて…ほしい」

強張った指先が解ける。
血の気の失せた掌が、大きく温かな手に包まれた。
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