第7章 古代種の神殿、再会
復旧したロープウェイに乗り込むと、リオは、後から乗ってきたヴィンセントの右隣へと然り気無く移動した。
気付いているのかいないのか、ヴィンセントは常の無表情で視線を床へ向けている。
殆どのメンバーは窓の外を眺めているか仲間と会話しているというのに、相変わらず辛気くさい。
ロープウェイの揺れに合わせて左腕を密着させると、その下向きな視線が揺れた。
何も感じていない訳では無いらしい。
自然と頰が緩むのを感じながら、リオは左手の指を少し持ち上げ、仲間たちからは見えない角度で、きゅ、と彼の指先を握った。
実際、ヴィンセントの肌の露出している部分と言えば、顔と、右手の手首付近と指先しか無いのだ。
握った指先がぴくりと僅かな反応を示し、ヴィンセントの赫い睛がちらりとリオを見た。
その視線はすぐに外されたが、ややあって、ヴィンセントの右手がリオの左手をしっかりと握り返した。
(……恋人繋ぎとか、するんだ)
意外な反応に、頰に熱が上る。
魘されて名前を呼ぶ程だ。今もその女性を想い続けているのだろう。
だが、頼まれて抱いたリオを放り出すこともしないらしい。
リオとしてはそれで充分だった。
(それ以上の関係を望まれても、困るし)
素知らぬ顔で景色を眺めながら、ロープウェイが地上に着くまで、手を繋いでいた。
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