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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第5章 ゴールドソーサー、夢の守り人


奥のベッドにヴィンセントが眠っているようだ。
だが、その眠りは穏やかではない。魘されているようだ。
「ヴィンセント、」
揺り起こそうとして、手が止まった。
ヴィンセントの唇から言葉が洩れている。
「…ツィア………すまない……クレツィア…」
いつもの赤いバンダナを外した額に、汗が浮かんでいる。
形の良い眉が顰められ、閉じられた目蓋の黒く長い睫毛が僅かに震えていた。
「………」
リオはゆっくりと顔を近付け、その額に唇をあてた。
汗の匂いに、舌がひくりと動く。
ーー舐めたい。
だが、衝動を押し留めた。
唇をあてたまま、古い言葉でまじないを唱える。

"巫子の慈しみに 此の者の眠りは護られる"

ヴィンセントの呼吸が穏やかになり、眉間の皺が和らいだ。
バスルームから取って来たタオルで額と首元の汗を拭う。先程まで魘されていたのが嘘のように、ヴィンセントは落ち着いた眠りを取り戻していた。
不意に、リオは渇きを覚える。
クラウド達の旅に加わってから、なんだかんだで一度も他者と"寝て"いない。先程の二人連れは打って付けだったのに、なぜか追い返してしまった。
「………う、」
穏やかに眠るヴィンセントの、軀に目が行く。
額に口付けた時の、汗の匂いを思い出す。雄の匂い。

リオはベッドに背を凭れ、ずるりと床に座り込んだ。
目を閉じて、衝動が収まるよう念じる。
少し落ち着いたら、さっきの二人連れを探そうか。しおらしく謝って、うんとサービスをする。それでたっぷり抱いてもらう。
見つからなければ、別に誰でもいい。
ここなら、行きずりの観光客は幾らでもいる。スタッフでもいい。
旅の仲間でさえ無ければ、誰でも。

ニブル山を越えた夜、口内に差し入れられた指先を思い出した。
「……ぁ、」
長い指が、リオの欲求に苛立ちを見せて、咽喉の奥を犯した。ヴィンセントの指。
「は……、」
ーー考えられない。

ふと、他人の気配がして、ヴィンセントは目を醒ました。
悪夢に魘されてでなく、こんな風にごく普通に目覚めるのは随分と久し振りな気がする。そう思って、数秒の間ぼうっとしていた。
その耳に、押し殺した聲が届いて、はっとする。
見ると、ベッドに背を預けて、少年が苦しげな息を吐いていた。
「リオ…?」
ヴィンセントの声に、肩がビクリと跳ねた。
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