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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第2章 二ブル山、敵か味方か


ヴィンセントの魔獣は打撃も強力だが、技を選べないのでは、あの強力な火球でこの難敵を回復してしまうだろう。
(……そう言えば、リオのリミットブレイクは、まだ見ていないな)
そう思ってリオに目を遣ると、目線が合った。
「見たいー?」
「…ッ、」
思っていたことを読まれたかのような問い掛けに、剣を取り落としそうになる。
「リオ」
ヴィンセントが窘めるように呼んだ。
「期待している。見せてくれ」
そう言って、口の端に判るか判らないかの笑みを乗せた。
寡黙な男のストレートな要求に、リオは照れ隠しのように唇を少し尖らせた。その唇が軽く開き、息を吸う。
素早く振るった鞭の先端が音速を超え、衝撃波が発生し、炸裂音が鳴る。
その動きと音に、二人だけでなく、モンスターも、リオを見る。
そしてそのまま、全員が目を奪われた。
流れるような動きで脱いだジャケットを放り、透き通るように白く艶かしい腕と肩が露わになる。
決して大きくは無いのに不思議と通る聲で謳いながら、リオが舞い始めた。

ーすべての風が我らを癒す

それは古い言葉のようにも、全く新しい言葉のようにも聴こえる。
言葉自体にその力があるのか、或いは舞うことで見る者に伝わるのか、わからない。
ただ美しい。
不意にそよいだ風に撫でられ、クラウドとヴィンセントは傷が癒え、魔力が回復するのを感じた。

ー風の剣が敵を薙ぐ
ー風の魔法が敵を祓う

クラウドの力が漲る。
ヴィンセントの魔力が増幅する。

ー戦う者たちに、祝福を

リオが両手の指先を紅く濡れた唇に当て、女神のような笑顔で、ヴィンセントとクラウドにキスを投げた。
クラウドはリオが男だということも忘れて興奮し、ヴィンセントも冷静さを保つのに苦労を感じた。
大気が今、完全にリオの味方をしている。

ーそして敵はおまえ

リオのしなやかな手がモンスターを指し、モンスターが怯むように後退る。

ーおまえは我らの敵
ー風に切り裂かれ、風に息を止められる

モンスターはぎりぎりと軋むような動きをした。
この地の全てに牙を剥かれたように脅えるモンスターと対照に、今やリオはこの地の全てに加護を受けているように自由に舞っていた。
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