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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第2章 二ブル山、敵か味方か


「………そうか、」
ヴィンセントは呟くように応じるだけで精一杯だった。
こんな風にあっさり肯定されるなど、予想していなかった。
化け物と怖れられ、嫌悪され、追い出される予想はできても、ここまで屈託なく受け入れられる、というのは、ヴィンセントの予想能力を超えていた。
従って、咄嗟に反応ができない。
「……そうだな、」
クラウドが言って、立ち止まり、振り返った。
「ヴィンセントは変身しても、味方だ。俺たちの仲間だ。みんなには、俺から伝えておくよ」
碧い睛の青年が神妙に頷きながら言うのに、ヴィンセントは戸惑いとも謝意ともつかない控えめな頷きを返した。
「でもさあ、」
リオが少し目を細め、唇に人差し指を当てる。
「ドラゴンには、あの、ビーストフレア? 使わないでよね。回復しちゃうじゃない?」
そう言って笑うのに、クラウドも思い当たった。
「ああ…そうだな、あいつは炎属性だ。ヴィンセント、変身のタイミングは考えてくれ」
ただでさえ厄介な敵を、あの強力な炎で回復などされては堪らない。
二人の軽口に、ヴィンセントは肩を竦めた。
「……覚えておこう」

* * *

「んー、やっぱり居るね」
リオが軽い溜息を吐いた。
この先を通れば、山を抜けて草原に出られる。
三人はその少し手前で立ち止まっていた。
「あそこから動く気配がないな…」
「押し通るしかあるまい」
三人の目線の先には巨大なモンスターが、一本道を塞いでいる。
碧翆色の、蜘蛛のようなそれは六本の脚と爪を持ち、大きさはドラゴンほどもある。
一度は他のルートを求めて山中を探索した一行だが、ぐるりと回って、結局ここに出てしまった。

「……行こう、」
クラウドの合図で三人は走り、モンスターと対峙する。
四本の脚で立ち上がった敵は、二本の脚を高く振り上げると、襲い掛かって来た。
ドラゴンの威圧感とはまた違う恐ろしさだ。
大きく鋭い爪が頭上から激しく振り下ろされ、前列から斬り掛かるクラウドの血飛沫が飛んだ。
すぐにリオが回復魔法を唱える。
「……強いな」
リーダーの青年は、勝てるだろうか、と眉を顰めた。
初めにファイアを掛けると敵を回復してしまったので、ヴィンセントは変身せず、魔法攻撃に専念している。
(火力が欲しいな…)
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