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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第2章 二ブル山、敵か味方か


それは大気を震わせ、人どころかモンスターすら竦ませる、魔獣の咆哮。
魔獣はグルルル、と唸りを上げながら、リオと、次いでクラウドを視た。金色の眼が二人の姿を捉え、荒い息を吐く。
そしてダブルブレイン達の姿を認めると、太く長い尾が大きく動いて風を切った。
次の瞬間、ダブルブレイン達は魔獣の吐いた火球を次々に受け、その爆発の中に、断末魔の叫びが消えていった。
「ヴィンセント!」
麻痺の解けたリオが途端に駆け出して、クラウドは再び度肝を抜かれる。
リオ、その先には、あの炎の魔獣がーー。
モンスターを殲滅した魔獣は、自らの力を誇示するかのように雄叫びを上げている。迂闊に近付けば、どんな攻撃を受けるか分からない。
いや……さっき、リオは、何て言った…?
魔獣、の元に辿り着いたリオが、繁々とその軀を見る。
「傷…治ってるんだ? …ヴィンセント、」
ヴィンセント。
そうだ、そう呼びかけた。
元タークス。あの男なのか?
リオが手を伸ばす。紫色の隆々とした軀に、白く細い手が触れた。魔獣が低く唸る。
暫くして、先程の変身を逆に辿るようにして魔獣が姿を消し、そこに赤いマントの男が立ち上がるまで、クラウドは一歩も動けなかった。

* * *

「ねえ、変身している間って、ヴィンセントの意識はあるの?」
下りとなった山道を歩きながら、ヴィンセントはまだリオに纏わりつかれていた。
クラウドは数歩先を歩いているが、背中を預けているということは、ヴィンセントの"変身能力"を目の当たりにしても、まだ旅の仲間として許容してくれているということなのだろう。
「意識は……残っている。だが、思考が、ガリアンビーストになっている。どう動くかはガリアンが判断している」
「ガリアンにも意識があるってこと?」
「…そうかもしれない」
己の軀と言えど、全てを把握しているわけではない。
宝条とて、結果が"成功"するとさえ、予想もしていなかっただろう。本当に"実験"だったのだ。
実際、死にかけた。こんな軀で生きているのは偶々だ。
知らず、溜息が漏れた。
ふふっ、と、リオが笑った。
「だいじょうぶだよ。変身しても、ヴィンセントは敵じゃ無い。僕達の敵と戦ってくれた。ピンチを救ってくれた。僕達は味方だって、ガリアンも判ってるんだよ」
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