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【FF7 ヴィンセント BL】星の旅

第2章 二ブル山、敵か味方か


二人の男に目を遣ると、クラウドは腕で額の汗を拭っていた。傷だらけで息を弾ませている。
ヴィンセントも怪我を負っていたが、
「リオ、」
小瓶を放って寄越した。
「エーテル? …ありがとう、ヴィンセント」
笑顔を見せて中の液体を飲み干すと、尽きかけていた魔力が多少回復した。
…だが、欲しているのは別のものだ。それは今この場では得られない。
(……"寝"たい、な…)
空になった小瓶を一瞥してヴィンセントへと視線を戻したとき、彼が口を開きながらホルスターへ手を滑らせるのを見た。
その目線はこちらだ。
「え、」
と言う自分の声と、敵だ、と言う彼の声に、銃声が被さった。
反射的に左の脇を見ると、ダブルブレインーー紫色の小型のモンスターが体液を噴いて身を捩らせていた。
そして、敵はその一匹だけではなかった。
四、いや、五匹が集まってきていた。
その中の一匹と目が合う。あ……、と思った時には遅かった。三対の眼に睨まれ、四肢に痺れを感じた。膝が崩れる。
「リオ!」
クラウドが"召喚"しようとして、そのまま動きが止まった。
一拍置いて、リオと同じように膝を崩す。
(二人も麻痺するなんて…ヴィンセントは、)
焦りを感じながら僅かに動かした視界の中で、赤色が揺れた。銃で応戦しているが、敵の数が多く、攻撃を躱し切れない。背後に回った一匹が素速く触肢を振り、攻撃を受けたヴィンセントが片膝をついた。
しかし、その後の現実は、リオとクラウドの想像を軽く凌駕していた。
まず、ヴィンセントの輪郭がぼやけたように見えた。それから…ヴィンセントが居た空間に、何かがーー現れたようだった。
それは、
「………っ、」
リオもクラウドも、四肢の痺れに関係無く、息を呑むことしか出来なかった。
屈めていた背をぐっと伸ばし、隆々とした両腕を振り上げ、
(ああ………)
そういう事じゃ無い…。
モンスターか、それとも召喚獣なのか? 目の前の衝撃的な映像に対して、脳が勝手に"似たもの"の記憶を検索し始める。
そうだ、写真で見た恐ろしいモンスター、"ベヒーモス"の…亜種か? 軀つきや皮膚の色、赤い鬣、そして巨大な角の具合が、似ている。少し細い気がする。尻尾はこんなだったろうか。そして目の前の…それ、は、二本の脚で立ち上がっているーー、ヒトのように、、
それが吼えた。
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