第7章 僕だけの青いイチゴ
店を出て、特にあてもないままふたりで歩く。
もちろん、傘はひとつのままで。
『月島君、あの···さ?』
「なに?」
『すれ違う人達が、みんな月島君の事を見てるの、気が付いてる?』
「あぁ、そんな事?別にいつもの事だし、僕は気にしない。それとも、そんな僕の隣を歩くの、イヤ?」
どうせ背が高いからとか、そんな事くらいで物珍しく見られてるだけだからね。
『そういう訳じゃないけど、一緒に歩いてるのが私でいいのかな?とか。ほら、今だって傘に入れて貰ってるし、もしかして···その、恋人同士とか思われてたら』
「思われてたら、なに?」
『月島君に悪いな···なんて』
「そう?僕は気にしてないって言ってるデショ?」
それに、そう思われているなら···僕的にはオッケーだよ。
『月島君が連れて歩いてるのが、私みたいなんじゃ申し訳ない···とか』
まったく···
普段から人に気を使ってばかりいるから、周りの目を気にし過ぎなんだって。
「そんなに申し訳ないと思ってるなら、お茶くらい付き合って貰おうかな?」
『お茶?』
「そ、この寒さで体が冷えたからね」
肩を竦めて寒さをアピールすれば、ひとつ返事でニコリと返してくる。
「それじゃ、行こう」
寒いから早くと急かすように、さも当たり前のように肩を抱いて歩き出す。
戸惑いながら僕を何度も見上げるのも気付いてるけど、なに?の一言で解決させる。
せっかくの雪。
せっかくの、ひとつの傘。
楽しめるところは、ちゃんと楽しまないと?
···ね?
いかにも、な喫茶店を見つけドアを押し開ける。
チリーンとドアベルが鳴ったのを聞いて、店員がやって来た。
「2名様ですね?ご案内します」
案内されるままに席に向かう。
菅「あっ、月島?!じゃ、さっきのはやっぱり月島だったんじゃん!」
チッ···
やり過ごしたはずの人達が、案内された席のすぐ近くに。
澤「ハハッ、あからさまにイヤそうな顔するなって月島···え?池田さん??」
菅「うそ?!なんで春華ちゃんが月島と?!」
旭「山口と一緒なんじゃなかったんだな」
僕の後ろにいる小さな影を見つけて、3人が騒ぎ出す。
「···僕がいつも山口といると思ったら、それは間違い」
ポツリと皮肉を行って、コートを脱ぎながら席に座る。