第7章 僕だけの青いイチゴ
「こんなトコでキミを襲ったりしないって。それとも、襲って欲しいの?ご希望なら、いくらでも?」
わざとそう言えば、今度はブンブンと大きく首を振る。
「それはザンネン。じゃ、もうちょっと大人しくして貰える?」
口をパクパクさせる池田の頭を抱き寄せ、僕の胸に押し当てる。
顔どころか、耳まで赤くなるほど僕にドキドキしてるの?
言っとくけど、ドキドキしてるのは···キミだけじゃないから。
でも、それも教えない。
楽しい1日を過ごすには、ちょっとしたスリルという名のスパイスも必要だからね?
緩む口元を見られないように、もう1度、池田さんの頭を胸に閉じ込めた。
普段はこんな近くに閉じ込めるなんてこと、ないからね。
だってキミは···いつもは···他のヤツらと絡んでる事が多いから。
クリスマスっていう、今日だけの解けない魔法を僕に頂戴?
明日からは、また···いつもの僕に戻ってあげるから。
気付かれないように、そっと髪に口付けを落として···吐息だけのキスを送る。
「さ、面倒な人達はいなくなったし?そろそろ行こうか?」
閉じ込めていた体を解放して、さりげなく手を繋ぎ試着室から出ると、外にいた店員にギョッとされたけど。
そんなの気にしない。
池田さんが会計をしているレジとは離れたレジで、僕もこっそり会計を済ます。
さっきのスカーフ、似合ってたからね。
僕がコレを渡したら、どんな顔を見せてくれるのか···楽しみだよ。
先に店から出て、次々と降りてくる雪を眺めながら一人佇む。
ホント、寒いよね。
首から流しているだけのマフラーを軽く巻き付け、待ち人が早く出て来ないかなと白い息を吐いた。