第6章 売れ残りトナカイ
そう言うたにも関わらず、翌日、侑と治は姿を見せず、バイトは終了時間を迎えた。
少しだけ売れ残ったケーキはサービスや言うて、1人ワンホールずつプレゼントって事で、もろたけど、大学に入って一人暮らしを始めたウチとしては、この時間からワンホールってしんどいんやけど。
侑「おー、やっぱ売れ残ってるやん。」
ウチの横にあるケーキの箱を見るや否やそう声を掛けてきたのは侑やった。
春華「売れ残りちゃいますー。これはもろたんですー。」
侑「ケーキやなくて春華ちゃん先輩。」
その言葉に思わず唇を尖らせた。
なんやかんや言いながらバイト仲間は彼氏が迎えに来たり、ナンパされたりで、皆幸せオーラ漂わせて帰って行きよった。ウチかて、着ぐるみやなくて、サンタのコスチューム着やったらええ出逢いがあった筈や。
治「ほな行こか。」
そう言って治に左手を握られた。
春華「は?何?」
治「俺ら言うたやんな?」
侑「どうせ売れ残るって。」
春華「それってウチの事か!」
侑「せやから貰いに来てやったやん?」
侑も治と同じようにウチの右手を取った。
治「そんじゃ、今から春華ちゃん先輩の家でクリスマスパーティーやな。」
侑「売れ残りもろてくれる優しい後輩がおって良かったな?」
春華「いや、全然嬉しないんやけど。てか、なんでオタクら手握ってんの?」
治「そんなん、お持ち帰りするからに決まっとるやろ?あ、この場合は俺らがお持ち帰りされるんか?」
ウチの意思を無視し、すたすたと歩き始める双子。その手を振りほどこうにもやたら力が強くて振りほどける気配が無い。振りほどこうとすれば、余計指が絡みついてきとる気がするんは気のせい?