第4章 赤鼻のサンタクロース
なんか嫌なこと思い出した。
オレだって滅多にあんな近距離にはならないって言うのに。
『で···時に······たの』
クロは···サラっと自然に振る舞うんだよなぁ。
別にクロの事だから、春華に対して下心があるワケじゃないんだろうけど。
···あったらオレ、多分暴れる。
『やっくん?話聞いてた?』
「えっ?あ、ゴメン···考え事してた。ちゃんと聞くから、もっかい話して?」
やべぇ、上の空になってた。
『だからね、黒尾さんから言われた時に···普段はちゃんと大人しく襲われてますよ?って言ったら、んじゃ報告待ってるわって笑ってた』
「そんなやり取りがあっ···えぇっ?!お、お前なんつーこと言ってんだよ?!」
普段はちゃんと襲われてるとか、オレやばいって!
しかも報告ってなんだよ?!
『ごめん···じゃあ、今日からは襲われないように気をつける』
「そこは気をつけなくていいから!」
オレだけには!
『じゃあ···襲って?』
「へっ?!」
『今日、クリスマスなのにあんまり一緒にいれなかったし···ホントはちょっと寂しいなって思ってた。だから実は、バイト終わったら···』
言いながら春華は立ち止まり、持っていたリュックからキレイにラッピングされた袋を取り出した。
『これ、渡しに行こうかと思ってたの···受け取ってくれたら、嬉しいです』
クリスマス···プレゼント、だよな?
差し出された袋を受け取り、マジマジと眺める。
「やばい···やば過ぎる···メチャクチャ嬉しいよ!いま開けてもいいか?!」
高まるテンションに、春華は子供みたいだと笑い出す。
『じゃあさ、ちょっとそこの公園に寄ろうか?あそこなら傘を畳んでも屋根があるから』
「だな。でも、長居はダメだぞ?遅くなったら心配されるだろ?」
オレがそう言うと、分かってる、と言って春華はまた笑った。
テーブルベンチに腰掛け、ワクワクしながらラッピングのリボンを解いていく。
「マジか···これ···」
『手編みのマフラーなんて、重いかな?とか思ったんだけど、やっくんいつもマフラーしてるなって思って』
今まで巻いていた物を外して、送られたマフラーを巻いてみる。
真っ白いマフラーの、端に少しだけ赤い毛糸が織り込まれて···まるで···