第4章 赤鼻のサンタクロース
「春華の家はコッチだろ」
な?と春華に問いかけ、返事を促す。
黒「知ってるっつーの。オレは小うるさいコイツらの面倒を見てやっから、後は···ごゆっくりィ!」
リ「うるさいって、オレの事ですか?!」
研「クロ、おれは別にうるさくしてない」
不自然な含み笑いを見せてから、クロはオレ達に背中を向けて歩き出した。
···は?
ごゆっくりィ?
···はぃ?
『やっくん···黒尾さんがね···』
「お、おぅ···?」
オレのジャージの袖を引きながら、春華が小さく話し出す。
『黒尾さんが、その···さっき···ね···』
なんだ?
なんか春華の様子が···変?
「クロが、どうした?」
『えっと、さっき着替える前に···今日のやっくんはモヤモヤしっぱなしだから···ちゃんと襲われとけよ?···って』
ちゃんと襲われとけよ?
って?!
「クローーーー!!!」
慌てながらも叫べば、クロは振り向きもせずに片手を上げて進んで行く。
なにカッコイイ立ち去り方したんだよ!
惚れちまうじゃないかっ!
そうじゃなくて!
襲ッ···
「えぇっー?!お、おそ···襲うとかなに?!」
『やっくん···声大きいよ···』
「あ、ワリィ···つい···」
どうしてくれんだよ、この微妙な空気!
おいクロ!
「と、とりあえず歩くか?」
頷く春華と手を繋ぎ、オレの傘を開く。
何を、話そうか。
何を、話せばいいんだ?
クロが置いていった爆弾のせいで、冷静さが崩落して行く。
せっかくのクリスマスにオレは部活で。
春華はバイトで。
どこにも行けず、一緒にも過ごせず。
だから、せめてプレゼントだけはって···プレゼント···?
そうだ、プレゼントだ!
「あのさ!」
『あのね!』
ほぼ同時に沈黙を破り、気まずさが増す。
「先に、」
『先に···』
また、被る。
たて続けに2度も同じように被ったことで、顔を見合わせて同時に笑い出した。
「なんだか、クロのせいで変な空気になって悪かったな」
『別に大丈夫だって。フイをつかれてビックリしただけだから。だって、いつもなら黒尾さん···あんな風に近くで話すことってないから」
あんな風にって···あぁ、さっきの、ね。