第4章 赤鼻のサンタクロース
ついさっきのクロと春華を思い出し、足元の雪を軽く蹴り上げた。
蹴り上げても蹴り上げても、何度も同じように積もる、雪。
グレーなオレの気持ちを白く染めて行くかのように、いつまでも降り続く、雪。
「寒っ···」
鞄に押し込めたマフラーを取り出し、グルグルと巻き付け、ひとり大きくため息を吐いた。
カッコ悪い、オレ。
もう1度ため息を吐いた時、視界の端で店の扉が開くのが見えた。
リ「あ、いたいた夜久さん!」
研「こんな所で、いじけ虫?」
ほっとけっつーの。
黒「ほら、先に出ろよ扉押さえといてやるから」
『あ、はい。ありがとうございます···うわぁ、積もり出してる···』
クロと一緒に出てきた春華が、辺り一面を見回して声を漏らす。
『どうりで冷えると思った』
そんなこと言う春華を見れば···パーカー1枚?!
はぁっ···と手に息を吹きかけ暖を取ろうとする姿に、さっきまでのモヤモヤも忘れて駆け寄った。
「お前···まさかとは思うけど、上着は?」
『ん?これ1枚だけど、裏側がボアになってるから平気かな?って』
アホだろ!!
例え裏側がそんなになってるやつでも、雪だぞ!雪!
マフラーも手袋もなくて自殺行為かよ!
リ「ハル、上着ないならオレの貸そうか?」
リエーフがそう言いながらウォーマーのファスナーに手をかける。
「いや、お前のはバカみたいにデカ過ぎて春華にはムリ。っつーか、絶対着させない!」
手早く自分のウォーマーを脱ぎ去り、そのままポフッと春華を覆う。
『でもこれじゃ、やっくんが···』
「いいから着とけ。か、彼氏命令だ!」
黒「へぇ~、初めて聞く呼び名だな」
「うるさいクロ」
ニヤつくクロに鼻息を荒くして、ウォーマーに袖を通すように促す。
「うっし!ちょっと大きいかもだけど、凍えるよりマシだろ、な?」
ポンっと春華の頭に手を乗せ、笑う。
自分の上着を春華に着せるのが、何だか彼氏の役得な感じがして。
ちょっとだけ、胸を張った。
黒「んじゃ、帰ろうぜ?」
「あぁ、そうだな」
クロにそう返して鞄を背負い直し、何歩か歩き出して···気付く。
「クロ?どこ行くんだよ?」
黒「どこって、家だけど」